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PERFECT DAYSのbirichinaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
やっぱりヴェンダースは寡黙な男を描きたいんだ。「パリ・テキサス」のトラヴィスを思い出した。

(ネタバレまではしていませんが、内容について触れています)
助けてあげた迷子の母親に無礼な態度を取られても、年下の同僚が仕事に遅刻してきたりサボってばかりでも、自分のお気に入りのカセットテープをそいつが売ろうとしても、家出した姪っ子が突然訪ねてきて居座っても、主人公は怒ったりムッとしたりしない。そんなことで彼のパーフェクトデイズは揺るがないのだろう。主人公が動揺を見せたのは2度だけ。年下の同僚が突然仕事を辞めて、その穴を埋めるために夜遅くまで働いて、3度電話してやっと会社につながった時と、姪を引き取りに来た妹から、父親に会いに行ってあげてと言われた時(父親とは過去にどんな確執があったのだろう…)。彼にとってのパーフェクトデイズが壊されそうな危機が迫った時だ。
紆余曲折を経てようやくたどり着いたであろう凪のように平穏な理想の暮らしと、そこに寄せてくるさざ波によって生じる主人公の喜怒哀楽が丁寧に描かれていた。

「木漏れ日」をさす単語はイタリア語と英語にはない。たぶんドイツ語にもない。日本語以外で「木漏れ日」をさす言葉がある原語はあるのだろうか?
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