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弟は僕のヒーローのbirichinaのネタバレレビュー・内容・結末

弟は僕のヒーロー(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

医師(カウンセラーだったかも)が夫婦に生まれてきた子はダウン症だと説明する場面、字幕では「検査していれば別の方法もあっただろう」的なソフトな表現になっていたが、原語では「なぜ検査をしなかったのか? 検査していれば中絶もできたのに」(言葉尻は微妙に違うかも)と言っていた。医師の当然そうすべきだったというような話し方やabortire(中絶する)という単語を耳にして、イタリアでもそのような対処がまかり通っているのかとショックだった。
しかし、夫婦が状況を前向きにとらえて他の子どもたちに「弟は特別な子なの」と説明したり、「何が特別なの?」と聞く幼い主人公に「染色体が1つ多い」と教えたりして、弟を家族の宝物のように思わせる。だから主人公は弟が超能力さえ使えると信じ込む。だが、成長して高校生にもなると、ダウン症の弟がいることがネガティブなことに思えて、学校の友達や好きな女子に隠すようになる。「弟がいたけど死んだ」と言ったりもする。ウソがエスカレートして事件になり、YouTubeに動画をあげる弟に対して許しがたい行動をとってしまう。でも、この家族は壊れない。たぶん家族に問題が生じたとき、みんなで話し合える家族だからだろう。「許してくれるのか」と問う主人公に、両親は「親なんだから許すに決まってる」と言うシーンはほろりとくる。
ただし、主人公が大勢の前で自分の過ちを暴露するのは、この主人公の性格からして話がうますぎて、やや興ざめ。

現在、イタリアでは障害者のことをdiversamente abile(健常者とは違う性質の人)と呼ぶ。(時代とともにhandicappatoハンディキャップのある人→disabile健常者ではない人→diversamente abileと変化)。この単語のとおり、物語の弟みたいな子は健常者にはあまりない能力、家族や周りの人を思いやりのある人に成長させる能力があるのだなと思った。

<原題について>
原題の直訳は「僕の弟は恐竜を追っかける」。
イベント会場で恐竜風船を追っかけたり、展示室で恐竜に夢中になって兄とはぐれたり、そんな弟への愛情が込められたタイトルだな〜と感心。

<自分のためのメモ>
・家族で大事な話をするときは、ディスカウントストアの駐車場へ行く(実は単に夫婦が出会った場所だから)
・主人公の幼なじみが若い頃の要潤に似ていてカッコよかった
・バンドやってるパンクっぽい伯母/叔母さんが主人公に言うセリフ「女の子とうまくいく秘訣はウソをつかないこと」だって、どうだろ?
・ダウン症の子どもがもらえる給付金は月額400ユーロ
・ネオナチに標的にされた(実は兄がやったと判明)弟が兄に向ってナチスのマーク入りTシャツを着て「兄ちゃん、大好き」Ti voglio beneと繰り返すシーンは、シニカルだったけど笑った。日本やドイツではできない!
・カーニバルの兄弟の仮装、兄=マイケル・ジャクソン?、弟=スーパーマン
・ぶみさんのコメントより(2023/1/27)
弟誕生の話を子どもたちにする時の家族の車は少し古めの赤いボルボ・240のワゴン
終盤の家族会議のシーンの車はシトロエン・ベルランゴ
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