ASHITAKAAkino

哀れなるものたちのASHITAKAAkinoのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます


冒険し 暴力と砂糖を知った

良識ある社会

真実で身を守れ


2024年映画11本目

無垢なベラが知性と虚無と世界の理と矛盾を獲得する冒険譚。
そして、マークラファロに癒され映画でした。ハルクから(ほぼ)解放されつつあるので(?)めちゃ生き生きしてた。性的なアプローチの噛み合わなさ。男の情けないところ駄目なところ(男には甘いが女の貞操感には超厳しい矛盾)の体現。一回退場して髪むしって叫ぶところ最高。服も適度に汚れてくたびれている。それからダニエルキイスのアルジャーノンを少し想起。

ゴージャスなセットと衣装、ハリボテちっくな背景と3D処理した舞台と遠景、デジタルとアナログを駆使した世界観の構築は個人的に良かったです。基本的には男と女の物語ではあるものの、無垢な子どもが大人になっていくのを大人が演じるので面白い。世界の貧困や飢えを知って、打ちひしがれても何もできない無力さを知る。前半からこれで娼館に行かなかったらダメだよなと思っていたら割と早く辿り着く。そしてそのことに嫌悪するマークラファロの情けなさが良い。

撮影は同じだけど、美術の凄みは前作の方が格段に上だったのもあり、観ていて楽しいのは『The Favourite』。本作のテーマは性とセックスの快楽と無垢な精神の成長譚。改善する、というワードが何度か。若い世代が駆られる義憤にも似ているし、社会主義、理想主義的。
子どもの方が大人より賢い。それは明晰に世界を見ることができているから。正直に、率直かつ的確に意見を述べ、本質を言い当てる。それをまざまざと見せつけてくる本作は、作家特有の皮肉とユーモアで溢れています。

でも賞レースになると『Barbie』じゃなくて『Poor Things』なのね、とも思う。意外というか何というか。面白かったけど、やっぱり人に勧めたいかと言ったらそうでもない。ただあのマークラファロは本当に好き。萌え、という感情を久々に思い出しました。
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