このレビューはネタバレを含みます
親に聞いてみる
素敵な腰に ご加護を
2024年映画31本目
出会いから別れまで。
性別、年代、恋愛観から好みは分かれそう。
ソフィア・コッポラが超好き、というわけでもないけど、楽しく鑑賞。
プリシラよりまずエルヴィスはジェイコブ・エロルディ。爽やかイケメンだけど、DVみのあるタイプキャストされがちなのは『Euphoria』のせいか。オースティン・バトラーのギトギトしたエルヴィスと大佐のやりとりを観たあととかだと、誰だっけ?エルヴィスか、ともなる。フィジカルではなく精神面での演技に寄せた印象。
でもこれはプリシラの物語。最初はチョーカーと控えめなおしゃれ。徐々に化粧や香水が増えていく。こういう服を着ろ、着るな、メイクはこうしろ、髪の色を変えろ、と言われて従う。支配的な関係性。若い頃のファッションは彼女の感情そのもののような気もして(怒っているときエルヴィスの嫌がる柄ものをわざと着ていく)衣装全体的に好き。文化資本と教養度高めの舞台美術は観ていて楽しい。
処方箋ドラッグは要所で登場。彼女も毎日服用する描写もあり、悪い意味での影響下に置かれる。ただLSDでトリップするシーンはお粗末。
別居を告げるエルヴィスを軽くいなすシーンは強かさよりも、彼女の孤独やあのような形でしか関係性を維持できない、という残酷めな描写のようにも。母になりつつある、またなって以降のプリシラは、彼の支配下とは別のゾーンを見つけている。でも、これから病院行くのにつけま付けて(地味に長くて叫びそうになる)、髪セットして、ちゃんとした服を着て、というのを観ているこっちが悲鳴をあげそうになる。誰かプリシラを助けてあげて、と。
前作もそうですが、父と娘を描くのがめちゃうまい作家だと思うけど、今作は希薄。調べたら実の父親ではなく、血は繋がっていないとのこと。多くはないけど、2人のいるシーンにどこかマジックを期待したり、感じ取ったりしてしまう。
原作はプリシラの目を通して見てきた話でもあるので、脚本が本来持つ抑揚があるかというと微妙に感じました。だれたり、ぶつ切りなシークエンスも目立つ。撮っても使わなかったシーンも多そうだが、映画の尺を優先したのかなと想像。それゆえに大きな脚色を控えめに撮っているとも言えるので、これはこれで正解と思うことに。
いろんなカメラで撮影していて好き。若い頃は誰かといる対比(しかもそれは年上の男性たちである)でプリシラの小ささが際立っていたけど、後半になると彼女の自立性を見せるためか、かなり大きく(?)成長したように意図した位置にカメラを置いたり、構図を作っていて流石。ジュークボックスのまえの軽口の言い合い、好き。卒業式に銃を持っていくエルヴィスに笑う。神経質なエルヴィスの貧乏ゆすりや手元の演技、好き。そしてその仕草がプリシラにも伝染している場面もあって上手いなと。
万人には刺さらないと思うけど、ガーリーでグロテスクな映画でした。