たらお

またヴィンセントは襲われるのたらおのレビュー・感想・評価

3.5
ある日突然、人々から襲われるようになった男のお話。
「目が合うと襲われる」というアイデア勝負の一作。
目が合えば同僚も隣人も見知らぬ他人も関係なく襲ってきます。シンプルに殴ってきたり道具を使って殴打、刺す、投てき……と暴力的になる謎の現象がひたすらヴィンセントを追い詰めていきます。
何故そうなったのかはわからず人目を避けて生きていくことになるわけですが、逃げ込んだ先にも安寧はなく気が休まることはありません。
そんなピリッとした緊張感がいい味出してました。
あと犬がよき理解者、仲間として頼りになって可愛かったです。
それにしても浄化槽で汚物まみれになりながらの取っ組み合いは観ていてキツかったですわ……

話が進むにつれてヴィンセントと同じ現象に悩む人、何故かヴィンセントを襲わない人も出て来て一体この現象は何なのか? そもそもの原因は? 何をすれば解決するのか? と疑問符が浮かびますが、作中でハッキリとした解答は出ません。
ヒロインとの交流の中で新たに浮上した謎もそのままなので、その辺はもう個々の想像に委ねているんでしょうね。
まあ話の締め方は個人的に好みですし、「逃げ」ではなく、新天地を探すための「新たな旅路」として前向きな終わり方でしたので深くは考えず逃避行を楽しんでいました。
ヒロインの台詞で「世界中が敵に思えることってない?」というのはちょっと共感したので、ちょっとした終末感を味わえる一作ですな。
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