クロフネ

水深ゼロメートルからのクロフネのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
3.5
よくできた舞台劇だと思いました。オリジナルを尊重するためか新たな脚色をあえて避け、カメラが水のないプールから出ることがほとんどない、いかにも舞台的な設定になっていました。また、人物を写す際も全体ショットが中心で、これも劇場における観客の視点に近い。寄りのカットがはじめて登場するのは、ココロがチヅルにメイクをほどこす、物語が半分以上進んだもはや終盤ともいえる場面でした(視力に多少問題のあるオレは、このとき初めて2人の顔の造作を認識しました)。

「よくできた舞台劇」というのがほとんどすべての感想で、それ以上でもそれ以下でもありません。冒頭から他愛のないJKたちの会話がかさねられ、彼女たちの置かれた状況や抱える問題などがじょじよに明らかになっていきます(深刻さとは遠いところで)。しかし、この映画は、そこを深く掘り下げることはしません。安易な解決も提言も、そして決定的な対立もありません。なぜなら、それを目的としていないから。ミクの、決意めいた「男踊り」(ポーズのみ)があるだけです。この愛すべき小品を締めくくるには十分ではないでしょうか。

凡百の青春映画と異なり、センチメンタリズムに流れ過ぎないぎりぎりのところで留まっているのは、山下敦弘監督一流のセンスだと思いました。
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