クロフネ

オッペンハイマーのクロフネのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
2.3
もう謝るしかないんですが、とてもつまらなかったです。3時間にも及ぶ、盛り上がりにかける会話劇。トリニティ実験が成功したときや原爆投下完了のあたりで、もう終わりだろと思ったけど大間違いで、そっからが長い。それもそのはずで、この映画はオッペンハイマーとルイス・ストロースの裁判だか公聴会だかを軸に描かれているため、一般的な(歴史的)クライマックスが物語のラストにはなっていません。また、忘れがちなことに、これは骨格としては裁判劇(室内劇)だったんですよね。そういった意味では、時制を入れ替えることを旨とする(笑)ノーラン監督作としては難解さは一切ありません。ただひたすらおもしろくはなかっただけです。

オッペンハイマーの大学時代からロスアラモス研究所を立ち上げるまでを描く駆け足ぶりはどうなんだと思います。数々の著名な科学者がほんの数秒(数十秒)登場したかと思ったらすぐに過去のものとなり、友人や愛人や政治家たちが立ち現れては彼と関係を結ぶけど、そこに人間的な繋がりが描かれることはほとんどありません。肝心の共産主義との関わりについても同様。ただオッペンハイマーの頭のなかにある、原子核の運動を表す光の筋と核反応を示すと思われる火花が、チープな映像(どうしちゃったんだノーラン?)で曖昧に表現されるだけです。まあ、キリアン・マーフィの惚けたような表情を見せるという意図は、わからないわけではないですが。

親切な友人からの「予習しとかないと置いてけぼり食らうよ」という助言もあり、歴史的な出来事や人物についてしっかりベンキョーしといたのにこのありさまです(知識は鑑賞の役には立ちました)。アカデミー賞いっぱいとってるし、評論家や観客からの評価もひじょうに高いので、たぶんこちらの感性が作品にふさわしくなかったんだろと思います。ただいろんな評論家の文書を読んでみましたが、これほどまで評価のポイントがはっきりしない、どこを褒めているのかわからない文章が目につくのも珍しいです。みなさん苦労してらっしゃる。

上映時間3時間の割に短く感じました。って高評価の理由になるんですかね。

「フォロウィング」に驚かされてからずっと追いかけてきた、いちノーランファンとして言わせてもらうなら、クリストファー・ノーラン監督最大の失敗作だと思うなあ。
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