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レオパルディのbirichinaのレビュー・感想・評価

レオパルディ(2014年製作の映画)
3.5
詩人レオパルディの伝記的な作品。前半は厳格で過保護かつ過干渉な父親との確執が描かれている。息子宛ての手紙を家庭内検閲したり、師と仰ぐ学者(?)と外出した息子を尾行したり。そんな父親の拘束から逃れたくて家出を試みた主人公が乗り込んだ馬車の御者台からぬっと顔を出す父親の姿にぎょっとした。無言だったが「絶対に私の手から逃れることはできんぞ」と言っているようだった。
中半の舞台は10年後のフィレンツェ、レオパルディは20代中~後半くらい。父から離れて、友人(突然登場し、どんな友人か説明はなし。レオパルディは伯爵家の息子、友人も裕福な家柄)と暮らしている。この友人の恋人らしき女優に恋心を抱き、叶わぬ恋に苦悩する姿が描かれる。後半の舞台はナポリ。苦しい恋から逃れるためか、この友人と友人の故郷ナポリに移り住むが、病気の苦しみに加え、詩人としても世間から批判を浴び(作風があまりに悲観主義で厭世的という理由で)、より孤独感が増す。病気が進んで主人公が頑固になっている。体によい食事を拒み、菓子やアイスしか食べないetc.エリオ ジェルマーノがせむしになった主人公を熱演。(この作品でせむしの歩き方を研究したのは「私は隠れてしまいたかった」でも役立ったことだろう。)

「疑うことから真実が生まれる(分かる)」とか、名言的なセリフがたくさんあった。

レオパルディの有名な(たぶん)詩がどのような体験から作られたかが分かるような作りになっている。
ただ、レオパルディ=イタリアで最も愛される詩人の一人、という知識しかなかったため、字幕でササッと見るだけでは詩の良さを味わうところまではいかなかった。先に詩を知っていたら、もっと楽しめただろう。

コレラの流行で壊滅寸前のナポリの街中で、主人公がすれ違う浮浪者のセリフ「(伝染病で)人類は絶え、王国も帝国も戦争もなくなった。誰も暦を刷らない。だが月は道を間違えない(抜粋)。La razza è perduta…Ma la luna non perderà la strada.」 は、災禍の中にある今、響くことばだった。

残念なのは長すぎること。2時間以下だったら4点なのに。。

ちょっとした疑問:ナポリでは背中のこぶ(gobba)はプルチネッラ同様に厄除け、お守り的な意味があり、背中にこぶのある人はこぶを触られたりするというが、この時代はまだそういう迷信はなかったのかな。
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