でんき

シン・エヴァンゲリオン劇場版のでんきのレビュー・感想・評価

4.5
本日二回目の鑑賞を果たしました。公開後すぐに観に行って、とても満足感のある映画だとは思いましたが、しかし日が経つにつれ自分の中に「あれは映像に誤魔化されてるだけなのではないか」という疑念が湧き上がってきました。そして今日改めて劇場に足を運んだ次第なのですが、結果は「最初に観た時よりもっと楽しめた」でした。
驚くべきは見事なペース配分と贅沢な尺の使い方をしていた点です。この作品は155分のランニングタイムなのですが、アバンタイトル、Aパート、Bパートでまるで180分の映画を観せられていたような感覚でした。まずさながら最終決戦前のモラトリアムのようなアバンタイトルからAパートで映画一本分観たようなお得な気持ちになります。Bパートに関しては会話劇が続くので、二回も観ると流石にキツいのではないかと危惧しましたが、最初に鑑賞した時よりすっきりとコンパクトにまとめられているように感じられ杞憂に終わりました。
そして物語は、主人公の碇シンジを取り巻く様々な人間関係が集約されるBパートに移ります。「前はシンジが好きだった」とアスカの告白、その場ではシンジは何も語りませんが、ゴルゴダオブジェクトに突入しアディショナル・インパクト発動後、「好きだと言われて嬉しかった」とシンジの心からのアスカへの言葉。最後の最後にまるでかつて同居していた頃の関係に戻るシンジとミサト。

そして自分が一番好きなシーンはシンジとレイが向かい合う「新たなる創世......ネオンジェネシス」です。あのタイトル回収は初めて観ていた時、気持ちよかったです。後付けでもいいから、当初深い意味なんてなさそうだったタイトルにちゃんと理由付けするのは好きですね(『進撃の巨人』みたいな)。昔からずっと「エヴァって新世紀ってタイトルである必要はなくね?」って思ってたので、あのタイトル回収には創作に騙される面白さを感じました。

アクションに関してはほぼ一対多数の物量戦で緻密な作画は凄いと思いましたが、TVシリーズや新劇場版序や破で見られたようなエヴァの多彩な戦法や武器を駆使した、それぞれ特徴の異なる使徒との戦いが今作には全くなかったので、そこは残念でした。贅沢を言えばもっとアニメならではの格好良さを追求してほしかったです。
そして最後はなるべくしてなったラスト。エヴァであんな人間賛歌が観られるとは思っていませんでした。そしてこの作品が完成まで漕ぎ着けたことは、何故だかスタッフでもないのに感慨深いし、大団円で終わらせたのは英断だったと思います。'94年のTV放映から25年以上の月日が流れ、この『シン・エヴァンゲリオン劇場版』自体何年もの歳月をかけて製作され、その間に庵野秀明監督自身に起こったプライベートや心境の変化が反映されています。やっぱりエヴァってスケールの大きな私小説だったんですねぇ。
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