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赤線地帯のSALTのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
2.5
黒澤明、小津安二郎と並び称される溝口健二を本作で初めて観る。
シェイクスピアやギリシア喜劇のような、人間の交錯によって生まれる力動を感じる。貧困の中で逞しく生きる女たち。
坂口安吾が堕落論の中で、「堕落せよ、日本」と説いたタフネスがここにある。
結婚をチラつかせて客を騙し、金銭をむしり取る女。騙していた事が発覚して逆上する男を切り捨てて開き直る事の不道徳。男は女を金で買い、女は男を騙して破産させる。これはもう男と女の殺し合いだ。不道徳の階層にある弱肉強食という正義とも思える。赤線地帯の女たちは気が狂う、自殺する、堕落する。非業の末路だ。女郎屋が曰く。「これが慈善事業だ、俺たちは国のできない社会奉仕をしているんだ」
面白い映画だった。
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