最後に見てから10年以上経っており、以前見た時はあまりに幼かったため、物語の内容や台詞をここまでしっかりと理解できたのは初めてだった。
ノスタルジックな美しい映像を見て、その世界観に憧れを抱いたり感動するだけでなく、焦燥感を感じたり何かに縋りたくなるような感覚に陥った。
特に、始めの引っ越しから両親が豚になるまでのシーンは、大人になった今でも無性に怖く、足が竦むような感覚になった。
自分が原因ではないのにも拘らず、彼女は多くの壁を乗り越えなければならなく、またその壁は、たとえ助けてくれる方が周りに居たとしても、10歳の少女にとってはあまりにも高過ぎたと思う。
自分の名前すらも忘れてしまう環境でも、両親を助けたいという事だけは忘れなかったり、自分が追い込まれてる状況でも、恩人の安否を気遣ったり、千尋は一見「どこにでも居そうな少女」だが、動機に注目すると芯を持った「唯一無二の少女」であると言える。
油屋での多くの経験を通し、銭婆の家に入った時に「失礼します。」と言い、油屋を去る時には「お世話になりました。」と言った場面は、千尋の大きく成長した姿が見え、彼女の努力が可視化されていたため、一番印象に残ったシーンだった。
元の世界に戻った千尋が、どうか周りの悪い影響を受けて腐る事なく、何かしらの形でハクと再会できますようにと、心から願いたくなる最後だった。