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ミラベルと魔法だらけの家のaのレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
4.9
今まで見なかった事を後悔するほど素晴らしい作品だった。ディズニー作品の中で最も好きな作品の1つになった。

まずは、ミラベルの心の広さを尊敬した。
特別な力を持つ家族が称えられる中、卑屈にならず家族の事を愛し続ける姿は、あまりにもできた強い人だなと思った。
少なからず、どんなミラベルでも愛していると伝え続けた両親の強さが引き継がれたのだろう。
だからこそ、アントニオがギフトを授かる時の幸福感溢れる陽気な音楽と雰囲気により、虚無感に襲われた。
あそこまで、相反する感情の両方を抱かせる演出は天晴だなと思った。

ただ、ミラベルが魔法が使えない事にプレッシャーを感じていた一方で、魔法が使える人も期待に応え続けなければいけないプレッシャーを抱えていた事が、私にとっては目から鱗だった。
もちろん魔法が使えない私は魔法を特別な物として、魔法使いに多くの夢と憧れを抱いている。
ただ、隣の芝生は青いと言うが、自分にない特別な物に向ける過度な期待は無意識だとしても、誰かを追い詰めているかもしてないと改めて気付く機会となった。

また、ブルーノに対して事件の前後で家族の態度が急変する様子は、記憶の中で勝手に人物像が改変されるが、正確に思い出してみると「正しい人物像」に戻るという、実際に起きる人々の「正しくない」姿が描かれていて印象に残った。
曖昧な記憶の中では、悪い記憶が誇張されても、正しい記憶により大切な家族だと思い出す、温かいシーンだった。
だからこそ、誤解を解かずに逃げ出してしまったブルーノが原因の1つであるが、誤解されやすいブルーノに家族の中に1人でも味方になってくれていれば良かったのにと思った。
温かいシーンである一方で、悪く言っていた事を忘れたように態度が急変する所に少し違和感を覚えた。そこがこの映画の唯一マイナスに感じる点だった。

また、終盤に自分らしさを見つけた姉とハグをしたらハッピーエンド!という流れになった時は、何て安っぽい最後なんだと、その直前までストーリーが盛り上がり続けていたからこそ、正直とてもがっかりした。
その為、そこからの話が続く事がわかった時は、安心感と嬉しさが同時にやってきた。

そして、魔法が与える特別感や魔法を失う恐怖を描いた先に、ディズニーが「魔法は必要ない」と伝える事に意味があると思った。
マドリガル家から魔法の力はなくなったが、街の人は一家の事を愛し続けていた。おばあちゃんは守るべきものを見誤っていたと言っていたが、「街の人の為に魔法を使う」という慈悲深い愛はしっかりと街の人に届いていた。
魔法に夢を持つ事自体は悪くないが、魔法がなくても夢は叶えられると描く事で、メインターゲットの子供達は、魔法がない自分の世界でも夢を持つ事ができるだろう。

それでも、最後はミラベルもギフトを授かり家族が1つになる事で、ディズニーらしい「夢と魔法を信じる素晴らしさ」が詰まった本当に素敵な作品になっていた。
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