jellyfish

人魚の眠る家のjellyfishのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.5
『人魚の眠る家』このタイトルだけではなかなか想像出来ないほど重い話だった。実話ではないけれど、誰にでも起こりうること。毎年夏になるとプールや海での事故は特に多い。水難事故でなくても何かのきっかけで、心臓は動いているのに脳死状態になって家族が決断を迫られることも。植物状態とは違って、脳死は二度ともとには戻らない。呼吸器を外せば心臓も止まってしまう。多くの国では脳死を"死"とされるけど、日本では臓器提供をする場合のみ脳死判定というものが行われる。
作品の中でお母さんが「まず脳死判定をして欲しい、移植の話はその後で」と言うと医者にそれは"ルール"でできないと言われる。「脳死か心臓死どちらの形で命を終えるか選ぶ権利がある」けどそれは当然、当事者本人は選ぶことができない。そしてその決断を迫られる家族の気持ちを思うとほんとにやるせない。"選ぶ権利"といいながら"ルール"と言われる。それは親切なのか?世界から見ても特殊なこの"ルール"が良いことなのか、必要なことなのかは私には難しくて分からないけど、誰かにとっては不条理で、他の誰かにとっては救いなのかもしれない。
お母さんの苦しみは勿論だけど、医療技術を提供する仕事をしているのに自分の娘を救うことが出来ないお父さんも、もっとちゃんと見ていれば良かったと後悔に襲われる祖母も、自分の姉のことでいじめを受けて「お姉ちゃんは死んだ」と言うしかなくなるイクトも、自分の代わりにミズホが溺れたんだと泣きながら謝るワカバちゃんも、登場人物みんなをみてて辛い。
警察が家に来たシーンはずっと忘れられないくらい深く印象に残っている。初めて観た時は大号泣。
軽い気持ちでは観られないけど凄く考えさせられる作品。
jellyfish

jellyfish