しとひと

来るのしとひとのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
3.6
承認欲求に囚われた大人たちと、その欲求に縛られた子供を描くエンターテイメント作品。


豪華なキャスティング、美しい色彩と光で描かれるホラー風スプラッターエンターテイメント現代劇。というジャンルレスと言っても良いほどのごった煮内容。
幽霊や妖怪、様々な超常現象は人間の醜い心が生みだしていることを前提として、物語の前半は現代社会の嫉妬・ストレスあるあるが展開される。次にその嫉妬やストレスの原因(人物や事象)を広げて更に原因を原因たらしめる人の醜い心の素を掘り下げていく。最後は様々な人間たちが生み出した『醜』と霊媒師たちの全面対決。
と、日本らしく序破急の構成になっているように思えた。

汚い・醜い部分を美しく描いていたり、挿入曲、思い切りの良い演出と抜群の演技を見せつける役者勢が素晴らしい。個人的には柴田理恵の存在感がとてつもなく良かった。演じている役の背景にある生活や人情味など、短い数カットでも十分に伝わりすぐに好きになってしまった。

前半のじっくりとした対人関係の不快感は良いのだけれど、後半の霊媒師とヤツとの対決がもっとぶっ飛んでいても良いかとは思ってしまった。ヤツとの対決は昔から行われていた感は理解できるのだが、だからこそもっと画で観たかった。
松たか子の『仲間が半分になった』だけで済ませてしまうのはもったいない。

そしてオチは純粋にこわかった。
無垢は善では無いということを改めて思い知らされた。



現代社会の問題をエンターテイメントに消化した良い作品です。
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