Emma

ジョーカーのEmmaのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

既に10回は見た良作。映画館に何度も通ったのはこの作品が初めて。

ジョーカーと聞けば、悪のカリスマでバットマンの最凶最悪の宿敵。
なんだけど、この世界線のジョーカーはごくごく普通の男。でも、どこか計り知れない孤独と怒りを抱えるまさに時限爆弾のよう。脳の障害で笑ってしまうアーサー。障害もあってか周りとはいつもどこかズレてる。常に周りに合わせようと作り笑いをしたり、自分の感情を押し殺す日々。自分が存在してるのか分からなくて鬱々とした気持ちに押し潰されそうなある日、地下鉄で証券マン3人からリンチを受けた彼は彼らを銃で撃ち殺してしまう。
最初は動揺し焦りまくるアーサーだったが、公共トイレに逃げ込んだ彼は高揚感に包まれていて、ここで彼の中の何かが決定的に変わってしまったんだとわかる 。

それからのアーサーは行動力の権化の如く好きな子とデートしたり、コメディアンとしてステージに立ったり、自身の出自の謎に迫っていく。殺しをキッカケに自信にみなぎる様子が徐々にジョーカーを彷彿とさせていて上手い。
そして終盤、彼自身は養子であり、彼の脳の障害は養母の恋人による虐待が原因だったと判明。
それを黙って見ていた養母。そしてアーサーはいつも幸せそうに笑っていた、ハッピーなのよ、なんて言い出す始末。超皮肉。全てを知ったアーサーの憎しみや悲しみの表情がとてもリアルで、アカデミー賞獲るのも納得。ついに養母を手にかけ、ついでにやって来た憎き同僚も始末したアーサーは憧れだったマレーフランクリンのショーへ。
そこで自殺するという最高のジョークを披露するつもりだったが、気が変わり、自身をバカにするために番組に呼んできたマレーを銃殺。もう誰も彼を傷つけられないし、止められない。逮捕されても満面の笑みで嬉しそうなアーサー。狂った群衆に崇められ、ついに彼は人々に本当の自分自身を見てもらえたのだった。

ずっと自分が存在するのかさえ分からなかった彼が殺人によって本当の自分を見つけていく、というのが最高にジョーカーだったし、彼にとって殺しもこの人生も全てがジョークなんだと思うと、やっぱりこれはバットマンのジョーカーの誕生を描いてるんだなーと実感。それまで彼の人生の邪魔者でしかなかった障害もまるごと受け入れ、それが自分なんだと肯定できたのは良かったのかもしれない。
彼の有名なコメディアンになるって夢も叶ったことだし、彼にとってこの物語は最高のハッピーエンドなんだろうな。
Emma

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