高澤奏

ジョーカーの高澤奏のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
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怖かった。
人が人を殺す瞬間を、初めて映画館で見たような気持ちになった。
今までどんな映画の殺人シーンを見ても、悲しい気持ちにはなれど、心の奥底では嘘だとわかっているから、本当の刺激を受ける事はなかった。けれどこの映画は違った。ほんとに人が殺されていた。

アメコミ作品でニューシネマ。しかも主役はジョーカー。
現実よりもリアルに、じっくりと人間の崩壊を描いている。そしてその後に待ち受ける展開は、再生物語でもサクセスストーリーでもない。
地獄絵図だ。

デ・ニーロのポジションは最高にイカしてた。
デ・ニーロがあの役をやっている設定そのものがナイスなジョーク。『キング・オブ・コメディ』を見てた人間なら確実に刺さるサプライズ。世代交代とも言える演出だ。

上映前、ポップコーンを自慢げに持ち歩いていた男が、上映後、恥ずかしそうにポップコーンを隠して館内を出て行った。つまりはそういう映画。
高澤奏

高澤奏