でんき

ヤクザと家族 The Familyのでんきのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.5
面白かった。というより良かった。物語は1999年、2005年、2019年の三部構成になっていて任侠大河ドラマといったところだろうか。この手のだとアウトレイジがパッと思いつくが、殺伐とし過ぎなそちらとは対照的に、「ヤクザと家族」は湿っぽくてナイーブな印象の人間ドラマに重きが置かれている。
市原隼人はこの作品でも上手いと思った。この作品は多分市原を主演にして撮っても成功したと思うが、それがなぜだか脇役でようやく三部に入ってからキャラが立ってきて、なぜ細野が主役級の市原なのかなんとなく分かる。個人的には市原が一部~二部でオーラを消して脇役の細野を演じているのが面白かった。
最後の2019年のパートでは、主人公の山村賢治(綾野剛)だけではなくその周辺の人物まで不幸になる。任侠道から足を洗い堅気となった賢治と細野竜太(市原隼人)が職場の同僚にツーショットを撮られてからの展開には、この世の地獄を感じた。そしてどう転んでもめでたしめでたしにはならないだろうと思っていたら、ハッピーエンドとは言えない結末どころか最悪の状況を描いて終わる。なぜツーショット程度で不幸な目に遭うのかは、実に現代的な理由で納得させられた。いまどきこんな救いのない作品は珍しい。妙に心に残る映画だ。
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