依羅

死刑にいたる病の依羅のレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
5.0
2時間、食い入るように観てた。

結局、みんな大和の掌の上で転がされてただけで、雅也だけが立ち直りかけてたのに、彼にとって唯一の希望たり得た灯里が洗脳済みだったとはなぁ…。

映画作品として非常に面白いし、ハンニバル・レクターを彷彿とさせる阿部サダヲの怪演が見事。
ボソボソと喋る岡田健史の演技も、かなり作品とマッチしてて良かった。


操る者・大和を中心に張り巡らされる蜘蛛の巣の中で、必死にもがく雅也の息苦しさがビリビリと伝わってきました。

もはや人間の範疇にない人物と向き合ってしまった時、自分ならどうなるだろう…そんな恐怖感もヒシヒシと。


最後の面会場面、雅也がまくし立てるようにして大和を論破しようとするも、当の大和は「疲れたな」と一蹴。
ここに、「本当にもうやめて欲しい」という人間性を感じるのか、「マジで興味がなくなった」という反社会性パーソナリティ障害を有した"なにか"の、凡人では認識できないおぞましさを感じるのか、人それぞれだと思うけど、とても興味深い。

「爪はキレイでしたか」
「僕が小さい頃はね」

唯一、この場面において、大和の人間である片鱗が見えた気はした。
想像しかできないけれど、大和が大きくなるにつれて、母親の爪は汚れていったのだろうか。あるいは、いなくなってしまったのか。

大和もまた虐待の被害者であったことは事実だろうから、この死刑にいたる病を作り出したのは、やはり親にあったのか…。


ひたすらに怖気がはしる、それでいて"ありそう"なストーリーに、ただただ唸るばかりでした。
依羅

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