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ある男のspoornerizmのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.5
平野啓一郎さん原作なので、見に行った。とはいえ、原作未読。静かに流れる中で、衝撃的な視点を与えてもらったドラマ「空白を埋めなさい」と同様に。

面白かった。
「何を持って、その人とするか?」みたいな命題が、きっとあるんだと思った。
名前でも国籍でもない。

(以下、ネタばれ)


帰り道、一緒に観た親と感想を話していて、「あれは自殺だったんじゃないかな?」と言い出した。 

『え、原(窪田正孝さん)が伐った杉の下敷きになったところ?』

「そう」

よく聞くと、原は幸せだったけれど、"長く続かないだろう、いつかきっと自分が偽ってることがわかってしまう日が来るだろう。"と感じていて、あの日、杉を切って転んだまでは偶然だったけど、倒れてくる杉の下敷きになるのは、自ら選んだんじゃないか、と。生命保険がおりることも想定済みで、と。

私は違う考えで
あくまで事故で亡くなった。ただ、妻夫木聡さん演じる弁護士が、ボクシングジムのサブリーダーみたいな人に「(原が死んだのは)自殺だったのか、事故だったのか?」と聞かれたとき、弁護士は「わたしは事故だったと思う」的な応え方が、含みがあって気になってはいた。

ただ、それは弁護士自身が、国籍のことで自身の苦しい経験を重ねて、そういう立場にある人が一瞬でもそうした考えを持つこともあるだろう、的な発言だったのかなぁ、とわたしは思ったが。

原(自称“谷口“)が、家族を持って幸せでいて、でも、“死“を自ら願ったなら、その日、息子を誘い山に入る理由は? もしそうであるなら、慕っていた息子は可哀想ではないか、、。

まぁ、考えは人それぞれである。
そんな考え方もまた否定できず、そういう意味でもいろんな見方が出来る映画だったと思う。
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