依羅

ノースマン 導かれし復讐者の依羅のレビュー・感想・評価

5.0
こいつはスゲーや、久々に魂が震える作品に出会えた…。
ベストフィルム入り確定です!

9世紀北欧を舞台に、父を殺された小国の王子アムレートによる激しい復讐譚が幕を開ける…。


個人的に、この辺の時代を大学では好んで研究してたからってのもあるし、単純にヴァイキング文化と北欧神話が好きってのもあるから、まぁ〜ドンピシャでしたね。

復讐に燃える戦士っていうテーマも良き。

大鴉王にイーサン・ホーク、道化と化した戦士ヘイミルにウィレム・デフォー、王妃はニコール・キッドマン、預言者役でビョーク、オルガ役でアニャ・テイラー=ジョイ、そして主人公はアレクサンダー・スカルスガルド。

豪華すぎん?メンツやば〜。


スゴいのはキャスト陣だけではなく、ヴァイキングの戦士と彼を取り巻く人々で構成される重厚な人間ドラマ、スパイスとしての神話世界との融合、そしてバランスよく取り入れられる戦闘とゴア描写、これらが非常に上手く組み合わさったストーリーだわね。

ヴァイキングといえば、略奪と暴力、魔術と儀式なわけですが、この辺はもう言うことないレベルで良かった。
臓物はまろび出るし、センス抜群な人体芸術なんかはありつつ、胸焼けするほどではないからわりかし誰でも観られる。
R18だけれど、不要なレイプ描写や残虐描写もなくてノイズにはならん。

それでもって、視聴者にヴァイキング文化をスッと伝えられる、この手腕はなに?すごいじゃん…。


"転"で、母親が黒幕と判明するのはちょっと想像してなかったな…。冒頭、夫婦間になんか溝があるんかな?とは思ったけど。
これは主人公には辛いよな。

この作品は対比も見事。
王にして戦士たるもクソ男だった父と、国を追われて情け無いながらも家族を大切にした叔父。
冷酷無比なアースガルズのオーディンと、アルフヘイムの豊穣神フレイ。
復讐という名目で結局パーソナルな自己完結=マスターベーションに終始した主人公と、広い視野で未来を繋いだオルガ。

たぶん、ふざけんなお前家族守れや、って、妊娠が判明したシーンで思う人もいるだろうし、その気持ちはよーくわかる。妻はそのように熱弁してました。
でもねぇ…復讐に焦がれて死んだように生きてきた主人公からすれば、その選択肢はなかったんよな。やり尽くしてヴァルハラに逝きたかったんだよ。
じゃあタネ撒いてんじゃねーよ感もあるけど。
しゃあねえ、これもまた人生。


吊るされた主人公の片目が腫れて見えなくなってる場面、これは見事だった。
知のために自らを吊るし、片目を差し出したオーディンの姿そのものなんだもの。
ところどころ出てくるヴァルキュリアも良い味出してたわぁ。


信念を貫いた漢の物語と捉えるか、親父動揺に身勝手な理由で女を苦しめる結果になったバカの話と捉えるか。
人それぞれだろうね。

こんな素晴らしい作品を作り出したのはどんな人なんだろ…って、え!?
『ウィッチ』と『ライトハウス』の監督さん!?
しかもこれ3作目かよ…今後が楽しみすぎるな…。


ありがとう、この作品に出会えてホントに良かった。
依羅

依羅