それぞれの人物ではなく、人物同士の関係性が全体の雰囲気を生み出している、といった印象の群像劇だった。
財閥令嬢でわがままでワンマンな社長のモーリー。
誰からも好かれて信頼されているチチ。
チチの恋人で安定志向の公務員のミン。
モーリーと学生時代からの友だちで売れっ子演出家のバーディ。
愛を知らず、育てたいと語る財閥子息でモーリーの婚約者のアキン。
アキンの片腕で女癖の悪いコンサルタント、ライリー。
女を武器にさまざまな男を利用しているフォン。
ほかにも、謎の作家やモーリーの姉、ミンの父親と内縁の妻など、登場人物はとにかく多彩だ。
そんな彼らが別の誰かとやり取りすることで、他の関係が変わっていく様子がコミカルに描かれる。
基本的にひとつの場面の登場人物は二人。
それがねじれにねじれて、おかしな感じに発展していく。
いろんなところが繋がっていく面白さや、誰もが主役であって主役じゃないというところはとても興味深かった。
エドワード・ヤン作品に特有の深い夜の色合いや、少し緊張をはらんだような空気感もしっかりある。
ただ、息詰まるほどの瑞々しさは、ほとんどがコミカルに変わってしまっているので、それを受け付けるかどうかで好みは分かれてしまいそうだ。
僕は、正直に言えばこの作品はちょっと苦手だった(だから点数も抑え目にした)。
それぞれの恋愛が描かれるのはいいが、それがそのまま仕事の場に影響していくのは、コミカルではあっても、リアリティが薄い。
女として気にいらないからクビにする、とか、嫉妬して「じつは彼女は転職を考えている」と社長に告げるとか、なんか全体的に受け付けない部分が個人的には多かった。
とはいえ、そこが気にならなければ、かなり挑戦的だし、十分に面白い恋愛群像劇だとは思う。
この作品が大好き、という人もきっと多いだろう。