くりふ

ラクパ・シェルパ: エベレストの女王のくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【そこに山だけがあった】

Netflix新作ドキュメンタリー。アメリカのルーシー・ウォーカー監督が、ネパールの登山家ラクパ・シェルパを追ったもの。

登山には興味なく、この方についても無知だったが、見れば興味深く、土台としての学びになりました。

ラクパ礼賛、女性のエンパワーメント映画に絞っているが、この場合、それで充分だと思った。

強靭な意志の持ち主で、ひどい抑圧と女性軽視の中、エベレスト登頂を志したのは自然なことに思える。

山岳のシェルパ族として生まれ育ち仕事がない中、(男のふりで)外国人観光客のポーターとなった先…エベレストだけが光る道として、足元から伸びていたのではと。

チャウシェスク政権時のルーマニアからアメリカに亡命したという、ゲオルゲ・ディマレスクとの“影ある”結婚生活と、健気な娘たちとの“影もある”交流。端的に触れてあり、これ以上は掘らずいいのではと。

撮られたタイミングもよかったのでは?夫との関係が落ち着いて、世界記録を超える登頂10回目に挑戦しようか、という時。映画化が前提で10回目に挑戦できたのかも、だけど、お陰でさらに、エベレストから先へと光の道が伸びたわけで。

ネパール、アメリカ、移民、性差、格差、差別…結果的に、現代の課題がチラチラと揃ってしまうところにも、記録される価値を感じます。

最後の方でも語られますが、ここに残されたことを、広めることに意義があると思う。だから一人でも多くに見てほしい…と素直に思いました。

<2024.8.2記>
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