ポルりん

特捜ロボ ジャンパーソンのポルりんのレビュー・感想・評価

特捜ロボ ジャンパーソン(1993年製作の映画)
2.1
等身大ヒーローに登場する怪人は、きまって一定のコンセプトに基づいている場合が多い。
これは、悪の組織が自社ブランド製品として怪人を生産しているからであり、デザインやコンセプトが似ているのは当然の事である。
その結果、独自性や個性的な活躍をする怪人は少なく、バリエーションが乏しい怪人が多い。
トイザらスに行くと、ウルトラマンなどの怪獣の人形は、ひときわ目を引きズラリと並ばれているが、怪人の数は少なくあまり引き付けられるものがない。
それは怪獣たちが独自性を持ちながらもバリエーションに富んでいるからであるが、それに比べて怪人はあまりに地味で、訴求力に乏しい。

こうした現状を打破する為に怪人を個性化しようと試みた番組も制作された。
「超人機メタルダー」や「仮面ライダーBLACK RX」では、悪の組織が4つの軍団に分けられ、各軍団がロボット型や生物型・妖怪型など、異なるコンセプトの怪人を差し向ける。
これにより、それぞれの敵幹部に個性が与えられるだけでなく、自然と組織内の出世争いといった現実世界を髣髴とさせる描写が加わり(主にメタルダー)、どこかしら不思議なリアリティを生み出している。
商業面では分からないが、個人的にはこの試みは成功したと思う。

そして、更に新たな試みに挑戦したのが、本作の「特捜ロボ ジャンパーソン」である。
本作では、「ネオギルド」、「スーパーサイエンス・ネットワーク」、「帯刀コンツェルン」といった、それぞれ別の思考や目的をもった3つの組織が同時多発的に的に活動し、ジャンパーソンに挑むといった趣向である。
考え方としてはいいと思うのだが、本作の場合はテコ入れとして試みたという事もあり、視聴者に消極的と感じさせてしまうのが、残念である。
それを子供たちにも見透かされてしまったのか、特段支持を集めることが出来ずに、更なる軌道修正を余儀なくされる事態に陥ってしまう。

息子を見ているとよく分かるが、子供は怪人に多様性を求めている訳でもなければ、悪の組織に惹かれている訳でもない。
子供が怪人に求めているのは、多様性とは全く逆の統一性である。
そして、悪の組織が生産しているから怪人のデザインが統一されるのではなく、怪人の統一性を維持するための説明装置として悪の組織が置かれているからこそ、等身大ヒーローは子供たちに支持されているのである。
だからこそ、「仮面ライダーBLACK RX」という例外を除いて、怪人を個性化しようと試みた「超人機メタルダー」や「特捜ロボ ジャンパーソン」などといった作品は子供たちから見放されてしまったのではないだろうか・・・。
もっとも、「超人機メタルダー」の場合は違う意味で離れたと思うのだが・・・。


そんな子供達から見放された「特捜ロボ ジャンパーソン」の劇場版の仕上がりはと言うと・・・。

とりあえず、アクションに関しては、子供に受けるように全部出しとなっており、特に不満などは見受けられる事はなかった。
ただ戦闘中、特に大きな移動をしてないはずなのに、廃工場→研究所→廃工場など意味不明に場面が切り替わる事に関しては、どうしても違和感を覚えてしまうのだが、まあ仕方ない。

アクションは良いにしても、シナリオ、キャラクターの行動や思考、そしてディテールなどに関しては、子供向け映画という事を考慮しても、残念な出来としか言いようがない。


ジョージ・真壁「怖がることはない、子供たち。お前たちは生まれ変わるのだ、このネオギルドの手によって!!人間によるくだらない教育に染まる前の純真無垢な子供の脳をロボットに移植。我がネオギルドの思想を植え付け、人間以上のロボットを作り出すのだ!!」


そういう事なら、10歳くらいの子供たちを誘拐するよりも、もっと下の年齢層を狙った方がいいんじゃないですかね??
要するに、ネオギルドの思想(ロボットを差別する人間を殲滅しロボットが支配する世の中を作る)を持った思考力を兼ね備えたロボットが欲しいんだろ・・・。
それ、あんたの周りにいる部下じゃダメなのか??
普通に条件満たしていると思うのだが・・・。


ジョージ・真壁「ありがとうFBI、よくジャンパーソンを連れてきてくれた!全ては罠だ、ジャンパーソンをこの墓場に誘うための!!」


なんて手間の掛かることを・・・。
確か、劇場版「仮面ライダーBLACK」でも似たような事をやってたな・・・。
子供たちを改造するといった情報を仮面ライダーBLACKにそれとなく伝え鬼ヶ島という無人島に誘い込むが、実は真の狙いは島中に罠を張り巡らせ仮面ライダーBLACKを倒す(というか脳改造して僕にする)といったものだったと思う。

てっきり劇場版「仮面ライダーBLACK」と同じように、島中に何かしらの罠が張り巡らせてジャンパーソンを倒すのかと思ったのだが、特に罠っぽい罠はなく、各々の敵が真正面からジャンパーソンに立ち向かっていくといった正攻法であった。
何の為にジャンパーソンをこの島に連れてきたんだ??
まあ、一応罠というか島全体が吹っ飛ぶ時限爆弾を仕掛けてはいたのだが、わざわざジャンパーソンの前で時限爆弾のスイッチを押すからバレバレだし、爆発するまで割と時間あるし・・・。
本当に倒す気あんのか??

そういえば、島が跡形もなく吹っ飛んだような映像が流れるが、10秒後には何事も無かったかのように復活している。
どういう事だってばよ!!
ジャンパーソンの話しに依ると敵の基地は島の地下にあるらしいのだが、どう見ても地上にあるただの廃工場なんですが・・・。
そして、子供たちが改造させられる寸前の所で颯爽とジャンパーを着たジャンパーソンが登場する。
てっきり何かしらの意味があってジャンパーを着こんでいるかと思ったのだが、登場してから10秒ほどでジャンパーを脱ぎ捨てるので、一見すると意味があるとは思えない。
しかし、後ろの方でFBIが子供たちを救出しようと行動した事を考えると、ジャンパーを着ることにより、


ジョージ・真壁「(え・・何コイツ。さっきまで素っ裸だったのに、急にジャンパー着だしたの?もしかして急にファッションに目覚めたの??だったら、下もはけよ!!)」


などと注意をジャンパーソンに向けるミスディレクション的な効果を狙ってのことかもしれない。
そう考えると、ジャンパーを着続けるのよりも10秒ほどで脱いだ方が、


ジョージ・真壁「(また、いきなり素っ裸になったよ!!え・・・もしかしてジャンパーソンって露出狂の趣味あったの??キモっ!!!)」


などという思考になり、更にジャンパーソンに注意を引き付ける効果がある。
まあ、FBIが自らの位置をバレるような行動を取ったので、無意味となったばかりか、ジャンパーソンに露出狂の烙印を押されてしまったが・・・。
その後、なんやかんやで子供たちを救い、父親と娘も仲直りして物語を終える。

アクションに関しては特に不満などは見受けられず、いわゆる全部出しで子供たちにも受けるものとなっている。
ポルりん

ポルりん