さわら

東京漂流 あなたのお部屋で犯らせてもらえませんか?のさわらのレビュー・感想・評価

4.0
「バクシーシ山下の社会科見学」、4回目にして初参戦。下衆な映画は渋谷で観るに限る。そんなことを強く実感した2時間半だった。
本作の内容は、バクシーシたちが4泊5日、ヤドカリのように女の家(ときに男優の家)を転々とし、その時々でセックスを楽しむという16年前に撮影された企画ものである。残念なのは、その家を貸す女性(男性)たちがアダルト産業に働く人たちで、些か狭く限られた世界観、内輪ネタでしかない点である。そうじゃなくて、「テレクラキャノンボール」のようにガチの素人宅に泊まるといった類のものならば、伝説的作品になったに違いないのだが。
出てくる人々の個性が強く、そしてまた色んなバックボーンを抱えており、まさに奇人・変人たちの見本帳のような映画だった。特に花岡じった氏の、動物並みの性欲は衝撃を超え、ある種崇めるほどの感動を覚えた。女性の尻を追い、隙あれば“さやを収めよう”とする姿勢は超肉食系!会場もそんな花岡じった氏に、素直に笑える下衆な人たちばかりで最高だった。
出稼ぎ外国人、ゴミ屋敷の住人、アルバイト感覚のAV女優、池袋テレクラに出没する自称マルチタレントなど。そんな雑多の人々を魅了し、寛容に受け入れる大都市・東京。
最初こそ、そんな東京で宿を定めず撮影を続けるバクシーシらが“漂流民”のように思っていた。しかしそうじゃない。雑多な世界である東京、そこに生きる人々こそ“漂流民”そのものであるように思った。皆が不確かな世界で確かなものを手探りで探している。ある人は金であり、ある人は神、そしてある人は愛なのかもしれない。本作にはアムラーやラッセンの絵など、懐かしいと感じさせる歴史的な資料としての魅力もあるが、それよりむしろ過去の映像が、今の写し鏡となり、世界の見え方をちょっと変えさせる魔力がある。“漂流民”の度合は今のほうが混沌としてるなーなんて、漠然と思ったりもした。

PS.このレビューを、都内にあるとある喫茶店で書いているが、となりに明らかにマルチっぽい勧誘をしてる人がいる(まとまりのないレビューなのもそのせい)。さすが混沌世界、東京!そこで漂流するも、確かな“コンパス”は常に持ち続けたいものである。

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