ジャン・エプスタン作品は、4本がわが国でも公開されているが、国立映画アーカイブに収蔵されている『アッシャー家の末裔』(28)だけでしかエプスタン作品に触れられなかった。それだけに、本邦未公開だった『二重の愛』(25)の上映は貴重。サイレントの本作は役者の表情演技であり、賭博(バカラ)シーンとその後の女の屋敷での再会シーンが息を呑む素晴らしさ。『天使の入江』のような狂気はなく、賭博に入れ込む青年を観察する主人公の冷めた視線で描いている。大団円のようなエンディングだが、どこか人生の虚しさを感じさせるシニカルな名編。