また一つ、POV、ワンカット映画の名作が生まれましたね。
冒頭のニュース映像と、破壊されたオスロ市庁舎の様子から一転して、画面はウトヤ島のキャンプ場へ。
オスロでのテロのニュースは既にここにも届いており、集う若者達にも不安は広がってはいるものの、「ここは世界一平和な場所」と、みんなでワッフル食べながら談笑したりしている。
ここからヒロインのカヤの姿を追いながら、ワンカットで映画は進んでいきます。
カヤの気掛かりといえば、あまりにもだらしのない妹の事くらい。テントの中も外も散らかしっぱなしで、姉の注意なんか聞きもしない、ほんっとに可愛げのない妹。しかし、電話で話す母が心配してるのは、この妹の事ばかりのようでした。
そこへ鳴り響く銃声。そして遠くから聞こえる悲鳴。何が起きたかもわからぬまま、「逃げろ!」と叫びながら走ってくる仲間たちに促されるようにして、建物の中に避難。しかし銃声は近づいてくる。
たまらずに若者たちは森へ逃げ込み、身を隠します。
このあたりからの展開が、物凄く緊張感があって、本当に怖かったです。最後の方まで狙撃者の姿を出さず、負傷者(その後死亡)すら、半分を過ぎるまで出さなかった事が、よりリアルな恐怖感を高めていたように思います。
離れ離れになった妹を探すため、森からキャンプ場へ一人で引き返すカヤの責任感の強さには心を打たれました。
それだけに、腹が立ったのは電話の相手の母親。彼女がカヤに何を言ってるのかはわかりませんでしたが、妹がいないと泣くカヤに、「妹はきっと無事だから、あなたは自分のことだけ考えて逃げなさい」と言ってくれなかった事は確かだと思います。
その一言があれば、彼女は死なずに済んだのでは?
余談ですが、森に身を隠していた時、カヤの腕に蚊がとまるシーンがらあって、あれは恐らくアドリブと言うか偶然なのでしょうが、妙に印象に残るシーンでした。森に住むヤブ蚊って、こんなにデカいんだと思ったし。