トケグチアワユキ

AMY エイミーのトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

AMY エイミー(2015年製作の映画)
4.0
Amy Winehouseのことはいつ知ったんだろう。
まあ私のことだから、bootsのtreeサイトとかでバカうまシンガーがいるとか話題になってて拾って聴いてみたんだろうけど、いつの間にかSharon Jones のバンドDap-Kingsと組んでて、そっからアメリカ進出を知るっていう。
なんというか、情報を得る方法がズレてる気がする。
その後Amyがいろんなイミでヤバいってのはネット上でも目にはしてたんだけど、そんなの音楽の世界には今も昔もよくあるハナシで、この映画のエピソードとなっているあれもこれも、ネットの記事で知ってるって言えば知ってる。ただ断片的だよね。事象のみっていうか、オモシロおかしくネタとして扱われたゴシップ。

そんな私は、Amyが亡くなったことはたぶんイチ早く知っていたはずだけど、この映画のことは2023年のPeter Barakan Music Film Festivalで初めて存在を認識するという映画情弱っぷり。
上映されてる映画の8割9割が必要ない私には、ホントありがたいフィルムフェス。

彼女の身に何が起きていたか、断片的にしか知らなかったから、はじめて肉付けされたストーリーを時系列で知ることができた。
しかも、彼女の書くリリックの内容と重ねる形で。

あの訳されたリリックを読むと、さすがに苦しくなる。
正直、ちょっとだけ彼女に〈歌〉があってよかったなと思わなくもない。
〈歌〉がなかったら、一体どうなっていたのか。
それと同時に〈歌〉が売れてしまったゆえの悲劇とも言える。

この映画で語られていることを、これ以上深く知りたくない。
でないと、〈気分〉で彼女の音楽を聴いたりできなくなる。
私にいちばん大切なのは音楽であって、映画でも彼女の人生でもない。

映え演出した生活をSNSで晒すことに躊躇のない、若くエンタメ好きの人には興味もないだろうけど、日本の文学には《純文学》《私小説》というジャンルがある。最近だと西村賢太とか田中慎弥みたいな。
久しぶりにそういうものに触れた気分。

純粋/ピュアみたいな美辞麗句も少し見たりしたけど、彼女のことをあまり礼賛するような終わり方ではなかったのに、少し安堵した。
本音を言えば、Amyに感化され過ぎないよう、特に歌をやっている方々に言いたい。
これはマネできるものじゃないし、もっと戦略的に立ち回った方がカネも人気も手に入れられるよ。
音楽は産業だからね。

それと、金儲けするために彼女を利用したと、まわりの人間を非難するのは違うと思うよ。
金儲けは常にとなりにある。切っても切り離せない。
誰かが彼女の歌をカネにする策を立てなかったら、彼女はもっと早くつぶれてたかもしれない。
悲劇的な結末は誰かのせいにしがちだけど誰のせいでもない。
この映画だって金儲けのために制作されてるわけだし、この映画の収入は彼女に1円も入らない。
日本は《純粋》を過大評価し過ぎだから、金儲けは悪いみたいに考えがちだけど、《純粋》だけじゃ生きていけないから。