テロメア

次元大介のテロメアのレビュー・感想・評価

次元大介(2023年製作の映画)
3.8
実写版『ルパン三世』は続けることに意味がある、と豪語した矢先に、Amazonによりスピンオフとして今作が制作され、やはり海外はフランチャイズ化が大切だとわかっていて凄いなぁ、と思うに至る。そもそもアニメのルパン三世だって原作者の漫画から様々な作家による漫画化、小説化、アニメシリーズ化、アニメ映画化、実写映画化、その他諸々と広げたからこそ今があるのだから、北村龍平監督版実写版ルパン三世もシリーズ化していかないと、ファンの付きようもないというもの。だから、今作制作は諸手を挙げて大賛成だ。

しかし、だからと言って今作の出来に満足したのかといえば、残念ながら満足とはいかなかった。なぜなら、今作はマーベルの『エターナルズ』と同じ失敗をしていると感じるからである。その失敗とは、実写版ルパン三世シリーズからの登場人物が次元大介だけだというところだ。エターナルズが他作品から独立しすぎている問題と同じことをしてしまっている。

検索したインタビュー記事にてアニメ『次元大介の墓標』を目指したとあったのですが、あちらはルパンがちゃんとメインにいての次元大介とオリジナルキャラクターの敵である。シリーズ性があってこそのスピンオフなのだから、今作だと銭形警部がいれば面白かったのでは、と思う(そもそも今回の敵役のアデルはヤエル奥崎とは違い、次元大介というガンマンとしての比較対象になりえていないのも問題である)。次元は悪党なのに良いことをすることがある(今作だと特に)、銭形は警察だが逮捕のためならなんでもする(原作銭形だとそうらしく、LUPIN THE IIIRDシリーズや実写ルパン三世もそれに近くルパンに取引を持ちかけている)。ルパン三世メンバーとしても比較対象になりえるし、そもそも利害が一致すれば問題なく組めそうなところも私は面白いと思うのですが。

(以下、妄想)
そもそも国際指名手配されているであろう裏社会の有名人の次元が、堂々と日本に入国できたこと自体がおかしいのだ。変装や偽造パスポートなどを使ってもなお、嗅ぎつけてくる銭形が取引を持ちかけてくるという流れが一番物語の入り口としてはスマートだと思う。あるいは、そもそも日本に来るきっかけを銭形が作る方がよりスマートかも。ガンスミスと会ったが駄目だったあとのどこかの国の空港で、銭形が各国のガンスミスと会っている次元のことを知っていて、凄腕ガンスミスの情報を渡す、代わりに日本に行って泥魚街の新しいボスの逮捕に協力をしろ、と持ちかけてくる。断るなら今ここで逮捕だ、と脅し付きで(もちろん、すでに包囲している)とか。受け入れれば、相棒の銃は直るし日本で休暇(追跡しない自由時間)もとらせてやる、とか。

次元は受け入れるのに損はないが、逆にそれが怪しいと訝しむ。が、銭形はこの一斉検挙は泥魚街とそこの市長や市議員ら、背後のヤクザ組織も一斉検挙だから、ここで次元を逮捕するよりも日本の警察に恩を売ることができる、と銭形がいうと説得力がありそう。普段、地元国の警察を顎で使っていることから、それをするための地盤作りとして恩を売るためにこうした捜査協力をしているとかのエピソードがあれば面白いし。

そもそも、泥魚街みたいないつの時代やねんみたいな犯罪者村のスラム街なんて成立させようとしたら、市長や市政がまるごと裏社会の人間がやってないと成立せんよ。日本だとヤクザやマフィアより宗教団体の方がリアリティはあるが(市町村の名前がそれになっているとこ結構あるし)、それだと趣旨が変わってしまうから、ヤクザが表の顔もしているというのがわかりやすい(どこぞの県はそれ系だと地元民に聞いたことがあるが、言動を見ているとびっくりするほどあれだったとかもあるし)。で、ラストの銃撃戦の最中に行った、市政や地元警察など主要機関に段ボールを持った集団が一斉検挙というニュース映像を背景に流しつつ、銭形が全て終わってバーで飲んでいる次元を労い、これでこの国でルパンを追いやすくなった、次は逮捕してやるとルパンに伝えておけ、とか言って去り、変装を解いたルパン(後ろの客としてずっと映っている、とか)が、次の仕事が楽しみだなァ、とか言い、次元が小さく鼻で笑う、でエンドロールとかのがルパン三世らしくない? とか、勝手に盛り上がってしまった(べったべたな演出だが、そんなんも良かったのではと思う)。

あと、上記にも述べたが、アデルは次元とガンマンとしての比較対象たりえてない問題。これは冒頭の野良ガンマンが卑怯な騙し技を行ったことを伏線とし、騙し合いやトラップや軍隊としての銃の使い手とかにすればよかったのではと思ってみたり。騙し合い上等のリアリストなアデルだからこそ、真剣勝負の決闘型ガンマンのロマンチストな次元とは合わず、昔にロマンスも破綻し因縁もできてしまったとかあってもよかったと思う。そんなアデルが最後に唯一、騙さず早撃ちをしたことから、過去のエピソードとして好きな男に抱かれて死にたい的なことを入れておいて、次元の腕の中で何も言わず、最後まで私に騙されたな的な満足げな顔で息を引き取り、次元も終始無言とかいいと思うのだが。(以下、ネタバレ)窓の外に吹き飛ばしてしまうよりはさ(ネタバレ終わり)。リアリストがロマンチストをした瞬間、死が訪れるという、次元からしたら明日は我が身な演出でいいと思うのですが(なお、本編では二人は知り合いですらない)。ロマンスに欠けるな、という状態でした。
(以上、妄想終わり)

やっぱり、入りと締めはルパン三世メンバーがいないとルパンっぽくならんよ。オリジナルキャラクターはそれがあってこそだと私は思うんですよ。なんかもっともっと出来たと思う、主に脚本段階で。まあ、それでも続けたからこそこういう風にあれやこれや言えるのだから、今後も続けてほしいですね。LUPIN THE IIIRDシリーズのようにするなら、今後は石川五ェ門、峰不二子、銭形幸一と続くの観たいですねえ。今後も期待したい。


以下、ただのいちゃもん。
効果音がなんか汚く感じた。特に百面相の川島の変身音。なんとかならんかったのか。そもそも、くちゅ、くちゃぁ、とか食べ物だったかな、他にもそういう系の音が多くて、これつけた人と私はセンスが合わんな、と終始もやっとして駄目でした。

もう一つは、商店街の面々が効果音以上に本当に駄目だった。泥魚街は相互監視体制なのはわかる。まあ、わかるが、商店街の面々も同じように情報がダダ漏れ。私が生理的に受け付けない過干渉による過度なお節介が美化される描写が、うわー、日本のドラマだー、という拒否感が強く出てしまった。未だこんな演出をする人がいるのか、という驚きと、それをAmazonという全世界配信するところでOKが出たのかという残念感と、逆にこれは世界的に受け入れられるスタンダード演出のか? という一周回って考えてしまうくらい、演出が往年の日本のドラマでした。泥魚街の人らより怖かったんですが、この商店街の面々。同調圧力と相互監視の権化みたいな演出だと思うのは、私だけなのだろうか?
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