テロメア

Fukushima 50のテロメアのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
3.5
映画としては正解だろう、とは思う。特に当事国ではない海外に向けてなら。しかし、国内ではほとんどがリアルタイム世代であり、あの現状を見ていた国内に向けてだと、もっとドキュメンタリー調に描いた方が良かっただろう。

特に思ったのは、誰も見ていない海底での地震発生の地割れ、そこからの大津波への迫力ある映像。これは当時誰も見ていないものだ。迫力はあるしスペクタクルだろうけど、あえて描かず原発が大津波に飲み込まれるシーンだけを引きのシーンで描いた方が、当時散々そうした映像が流れていたので想像しやすく、またそのあとに多くの犠牲者が出たという結びつきがしやすいだろう。迫力あるシーンではあるが、それを描いてしまうとやはり「ああ、映画だよなぁ」という気分で、どこか興醒めしてしまった。海外や半世紀くらい経っていれば別だろうが、あれからまだ十年程度では、この大迫力シーンには冷ややかに感じてしまった。

あと、邦画あるあるとしての登場人物の家族ドラマシーンが邦画としては最小限とはいえ、原発事故の対応と交互に描かれている辺りは、正直カットしてしまえばもっと短くできたろうし、あるいはもっと作業員同士の専門的な対応のための会話を増やせたろうと思う。そう考えると、そうした家族ドラマシーンをバッサリなくした『シン・ゴジラ』は大災害映画としてよくできていたんだなぁ、と再認識いたしました。

さらに、映画的でいまいちなのはラストシーン。なんか、全て終わった感を出しているが、まだまだ問題は山積しているのだから、最後はとりあえず落ち着いたから、いったん家族に会いに帰ろうと、原発の現場から帰路につくという引きで良かったのでは、と思う。この終わった感が、まさに悪い意味で映画的だった。

逆に、いい意味で映画的だったこと。本当のところはどうだったのかは、本人たちしかわからないにしても、当時の菅直人総理や東電幹部たちが、佐野史郎と篠井英介だったこともあり、ものすごいどうしようもない奴でなく、それぞれ別の理屈で動いているんだろうなあ、空回りだけど、という風にも見える。そして最後のシーンで他の人たちが喜びまくっているなか、吉田所長と同じく責任者のその二人も押し黙っていて、むしろこれらからが大変だぞ、という雰囲気なのがとても良かった。実際はどうだったかの真相なんてわからないのだから、一方的な悪役にするのではなく、対応はまずく失敗し邪魔をしていたとしても試行錯誤していた一人という方が、映画としてはフェアな描き方だと思う。この点が、他にももっと良くできたろう、というのをかなり相殺してくれたので初見としてはなかなか良かった。

あれこれ、こうした方が良かった、ああした方が良かったろうに、とかいろいろ思うところはあれど、大作の邦画としてはかなり珍しく力が入っていて、よく出来ていたことが素直に喜ばしい。同じく福島原発事故を描くNetflixの『THE DAYS』も見てみようと思う。
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