テロメア

ルパン三世のテロメアのレビュー・感想・評価

ルパン三世(2014年製作の映画)
5.0
今作は予告編がダサ過ぎてよくある邦画による実写化失敗例だろうと思い回避していましたが、そもそも北村龍平監督の作品が好きなので魔が差して鑑賞。結果として、あれ、邦画の実写化ではかんなりの成功例では、という思わぬ収穫に。

今作はルパン三世のイヤーワンとかオリジンとかそんな感じで、原作はさらっとしか知らないのでまたこれを機に読もうと思うのですが、ルパン帝国のような犯罪組織がザ・ワークスとして再構築されており、ざっくり言うとその組織から独り立ちするまでの話となっております。なので、映画オリジナルメンバーとしてライバルからクラッカーまでおり、その点がアニメのルパン三世好きの逆鱗に触れたっぽい。けれども、今のアニメルパン三世のイメージはほとんどが宮崎ルパンじゃんか、て話でルパン三世全体を見ると亜流的なファンだと思う。

これと同じ現象が同じ北村龍平監督作品で起こっている。『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』だ。当時のゴジラファンとされる人々から総スカンを喰らったのだが、その当時のゴジラファンと言うのは、結局、平成ガメラシリーズのファンであり、平成ガメラシリーズ(特に『ガメラ レギオン襲来』)のようなことをゴジラでもしてくれ、という要望が強過ぎたため、平成ゴジラシリーズは迷走を続け、仕舞いにはぶっ壊してくれという(配給会社だったかな、の)要望のもと、制作され見事に暗くシリアス路線から、ぶっ飛んだお祭り映画として『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』が出来上がった(らしい)。私はこの映画が好きで、当時のDVDの豪華版をコレクションしている(よく怪獣映画のジャンルとして、最近のハリウッド版ゴジラシリーズやシン・ゴジラが出来る前は、リアル路線が初代ゴジラ、シリアス路線が『ガメラ レギオン襲来』、お祭り路線が『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』と、怪獣映画をお勧めするときに友人に語っていた。怪獣映画好き以外だと、意外とお祭り映画の方が受けが良かった)。今作のルパン三世もそれと同じ現象で、宮崎ルパン好きに否定されている印象を受ける。

まあ、実写化で大抵の人が期待するのは、一番広く知られているルパン像だろうけれど、そもそも言ったら宮崎ルパン(カリオストロの城版)は、ルパン三世からしたらかなり亜種だったし、原作者も当時ご立腹だったのは有名な話。なんせ、当時に永遠と続くだろうと思われるルパン三世の息の根を止めようとしていたのが、宮崎駿であり幻企画としてこれまた有名なのが、その次作になるはずだった押井守版ルパンだったわけだ。現に押井守証言として、宮さんに「止めを刺せ」と言われてた、とあるし(なのに、最近のルパン三世PART6にて押井守脚本の第4話「ダイナーの殺し屋たち」と第10話「ダーウィンの鳥」が、初期ルパン三世シリーズに一番近く面白いのがなんとも皮肉的だったりする)。人気キャラだといろいろと変わるのは当たり前なのだが、今作はむしろ原点回帰をしているうえに、人気キャラとして変遷をした要素(ルパンの愛車など)を入れつつ描いているのでサービス精神旺盛だと感じた。これはゴジラの時もそうだったけれど、北村龍平監督はシリーズファンを大切にしていると感じる。しかし、広がるのは罵詈雑言というのも共通している。なぜか。

ルパン三世の原点回帰を謳っている『LUPIN THE ⅢRD』シリーズ(次元大介の墓標、血煙の石川五ェ門、峰不二子の嘘)とは別方向の原点回帰が今作だ。それも、このシリーズが続いていけば、原点回帰しつつ広く知られた宮崎ルパン像へと向かえるという雰囲気なのが面白い。ハードボイルド路線のアニメシリーズと、リアル寄りのコミカル路線の実写版シリーズとして続けてほしいと強く思う。

そもそも実写化というのは、あのダークナイトシリーズのバットマンですらアメコミのバットマン像からは当時亜流だったわけだし(特にジョーカーが)。それが逆に、アメコミに逆輸入とかもよくあるわけだから、この実写化を続けていけば、オリジナルキャラも人気が出れば新規のアニメや漫画などで逆輸入もあるかも知れない。ちょっとした批判程度でシリーズ化しないから、失敗の烙印を押されてしまうのだ。もっと制作会社は出来た作品をしっかり見て売り込めや、と宣伝方法が一番間違っていたと私は思う。特に、予告編は映画観た後に見てもダサい。あと、原点回帰をちゃんと謳わないと。もうさ、『ルパン三世:オリジン』とかで良かったのでは、とも思う。あの時代の漫画家は、ほとんどアメコミの影響下なんだし。

まあさ、北村龍平監督のカメラ演出がダサいと感じるというのもわかる。遠くから近づくときに急に早送りになって決めポーズからのまた早送りとか、あのダサさをダサカッコいいと取るか否かはある。しかし、映画一本の物語としては、同じルパン三世だから比べてしまうが、個人的にはCGルパン三世の『ルパン三世 THE FIRST』より好みだった(こちらはこちらで面白かったので、CGルパン三世シリーズとして続いてほしい)。なんにせよ、作り続けないことにはファンはつかないのだから、一作で終わり、というはどうしようもない。ぜひ、今からでも次作を作ってくれ。

あと、DMMで見たので全部吹き替え版だと思っていたのだが(アニメ的な演出でいいと思うし)、Blu-rayなどのソフト版にはワールドプレミアver.の字幕版もあるらしいので、そのうちソフト版もチェックしたい。廉価のBlu-ray出してほしいですねえ。とりあえず、邦画で実写化=ほぼ失敗作という先入観はダメだなぁ、という教訓になりました。


追記。
アマプラで玉山次元の新作が作られるようだ。やはり、作り続けてなんぼだよね。楽しみ。
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