トケグチアワユキ

未来世紀ブラジルのトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)
4.5
80年代後半、「ブレードランナー」との2本立てで、じゃない方の作品として観て、いたく感動し、もう一度大きなスクリーンで観たいと思い続けて三十余年、ついにそのチャンスが訪れた。

モンティ パイソン日本語吹き替えオンエアの同時代にありながら、当時はスルーを決め込み、ここから興味を持ち、90年代NHKの字幕放送でどハマりした周回遅れとしては、目で見て再度確認しなきゃ軽々しくレビューもできない重要作。
ベストムービーにも選出させていただいております。



長げぇぇよ!! クドい!!
なんであんなに感動したのか?

まあ、アウトラインは映画.comあたりで確認していただくとして、天下のテリー ギリアムですから、ディストピアを描くなら観てるお前ら客もツラい思いぐらいして当然と不敵な笑みのひとつやふたつ浮かべててもおかしくない。映画館の座席で地獄体験してれば? このクドさ浴びてみろっ的なこと言いそうなシニカルなジジイなんだよなぁ。

残念ながら、いまの映画館の椅子は地獄なんかぜんぜん感じようがない快適さで、気持ちよーく寝ちゃうんだけどな。そこはいかにギリアム先生と言えども想定外かもな。

いま(2021年)観るとさすがに洗練度合いが低すぎっかなぁ。
秒、気ぃ失うこと2度ほど。

妄想の中で夢をみるというイメージの跳躍だらけで、そこはもう胸やけするほど。
緻密な因果関係を求める現代のSFからしたら(SFのこと知りませんが)、おそらくめっちゃくちゃだろうなと想像します。
でもそこはワタクシ楽しんで乗りこなしていけます。
アナログな未来ガジェットの数々も麗しく、目にも楽しい。

ただ、夢で見たディーヴァを手に入れるため役人が狡猾に情報抜きまくるってやりクチが気になってな。
時代って変わるよな。
昔は住所電話番号どころか、クラスの連絡名簿に両親の名前から何なら勤務先まで晒してた時代もあったのに。
いまは女と関係持つためだけにそういうことするんだお前、みたいなモラルが気になるっていう。

20代のワタクシに敬意を表してベストムービーからはハズしませんが、スコアは4点台前半がいいとこかなぁ。
評判やアウトラインだけで今の若人が観たら、イラッとするぐらいじゃ収まんないでしょ。
架空の国なのにbrazilってのも日本人にゃよくわかんねぇし、おもしろいっちゃおもしろいんだけど、いまはこんな映画つくれないわな。ブラジル本国からクレーム来るってば。

最後に一個だけ。
このブラックな映画に、妙に陽気な「ブラジル」っていうサンバの大ヒット曲を合わせたセンスはすごいと思う。狂気にドライヴがかかっちゃって、それだけでスコアはプラス0.5いけるね。

この映画を再見して私の中で確定したこと。
テリー ギリアムは名作なんかつくれない。
つくれるのは怪作だけ。


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2022.10.17.
ついにベストムービーからはずす。
いつまでも、ここに留まってるわけにはいかない。