テロメア

ミッドナイト・ミート・トレインのテロメアのレビュー・感想・評価

4.0
十年以上前の初見時には、アメリカに渡ってただのスプラッター監督になってしまったと落胆した覚えがあります。しかし、今見返してみると初見時から様々なゴアキュンなスプラッター映画を観たお陰か、今作は上品に撮っているんだなぁ、と認識を改めました。

スプラッター映画は苦手とするジャンルなので、好んで観たりしないのですが、今読んでいる倉谷滋著の『SF映画に「進化」を読む 地球外生物学』の中、その映画『エイリアン』の章にて、上品なホラー映画として『エイリアン』の一作目と本作が並べて書かれていたので、そう言えば今思えば不思議な映画だったな、と思い見返した次第です。

ネタバレとして少し触れると『エイリアン』と本作の共通項は、地球外の食物連鎖に巻き込まれてしまった人々の話。人間的な感情や思想が伴わない、ただ単に肉としてしか見られていないところと、一歩間違えばただのスプラッターにしかならないところを、全体的に硬質な金属的な色で映されている雰囲気や、そもそものスプラッターになるシーンが直接描写を極力避け、必要なシーンのみ描かれていることや、描かれても血が弾けるところはどこか綺麗な感じに、目玉が飛び出すところはどこか同監督作に見られるようなお茶目さがあるなど、十年以上前だと分からなかったことが感じられました。

あと、同監督作品によくあるカメラがぐるぐる回るアクションシーンなどもあり、何だかんだ監督としての色がちゃんと出ていたんだなぁ、と。上記の本に記されていた「上品さ」という表現も本作を見返して、なるほどな、と感じた次第です。映画は時間が経つと見えるものが変わるな、と再認識しました。

まあ、そもそもスプラッター映画は好んでは観ないのですが。いわゆる、スプラッターの王道では、もっと生々しさとか汚物的な汚さや猥雑さなどがありますが、今作はそれがないためスプラッターが苦手な方にも、ちょっぴり見やすい気がする、かも。今作は今で言うならSCP的や怪異譚なので、殺人鬼的なスプラッターを期待すると肩透かしかも知れません。
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