テロメア

サロゲートのテロメアのネタバレレビュー・内容・結末

サロゲート(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

子供を亡くしたことで引きこもった妻を部屋から出すために、私怨の八つ当たりな敵をお手伝いしちゃったけど、なんだかんだ生身はいいだろう、という雰囲気を醸し出してしまう主人公のお話。

手伝ったらいかんだろーよ、というオチにより、すべてが台無しだった。ラストにサロゲートが全滅するのは映画的にいいとしても(だとしても、結局、別の会社が同じものを作ろうけどね)、それを主人公が直接手を下したら全部台無し感満載になるって。

ラストシーンは主人公は迷う。心を閉ざした妻のサロゲートをぶち壊したいから。しかし、だからといって個人的感情で全人類の私的財産を破壊していいわけではない、と踏みとどまる。ラストは『Y』を選択。止まると見せかけて、敵が残した二重の仕掛けにより、装置は起動。全サロゲートが機能停止に。という流れなら、結果してやられたけれども、最後まで警官としても個人の人としても、正義感も倫理観も失わずに、怪我の功名として生身同士で妻と再会する。と、できたはず。それなら散々迷いつつも踏みとどまった主人公が得たそのきっかけを、よかったね、と素直に感じて映画を終えられるわけだ。しかし、自ら手を下したのなら話は別。家に放火して救助したとして、放火したやつに感謝するのか、と。まさにマッチポンプと化した。敵に共感や共鳴を覚えても、踏みとどまるから主人公たりえるんだよ。それを越えたら、主人公としてのヒーロー性は失われる。つまり、魅力がなくなった。そういう主人公はたくさんあれど、この映画に関してはそれじゃない感が強かった。残念。

しかし、SF映画としては好き。髪の毛のあるブルース・ウィリスがなんだかめっちゃよかった(違和感の塊でよかった)。全世界がサロゲートにより、物理現実が物理アバターによりリアルワールドで自由に生きる。いい世界じゃないか。ただ、ひとつのウイルスで全滅するようなセキュリティでよく今まで機能してきたな、というガバガバのセキュリティ意識は企業としておかしかろうよ。ダメダメな国営システムならまだしも、それでよくアメリカの資本主義経済を制したな、という別のツッコミどころは、まあ映画だから、と我慢しました。そんなのよくあるし。

だけどもね、この世界の一番おかしいところは、サロゲートが複数画面を直接見て防犯しているという謎システムよ。いやいや、その処理なら物理的に映す画面も物理的に直接見るサロゲートも要らんでしょうよ、と。あれが一番変だった。どうしてSF映画の大半はひとつの技術しか進まないのか。現実を見ればひとつの技術が誕生すれば、それに類する技術が芋づる式に発展進化していくものだと、現代人なら誰もが体感しているというのに、大抵のSF作品にはそれが見られない。SF好きだから映像化したものを見られるから、なんだかんだ好きぃーと思うんだけど、いっつもそこら辺が頭の端で、好きだけどビミョーとなる。加点方式で見たいのに、めりめり減点されていく。目が肥えると自分の脳内ツッコミというノイズが酷くて困る。そのツッコミを全部覆してほしいが、そういった作品にはそうそう出会わない。

サロゲート技術は遠隔操作(無線だから当然、超々高度技術)なのに、人型は動かせても自動運転技術はないのでサロゲートで運転とか。上記のサロゲートが画面見てて判断とか(遠隔操作でサロゲート使わずに、仮想空間上に画面展開すればいいのに。どちらにせよ、生身は自宅で寝ているのだから)。こうしたSFではなぜか一企業がすべてを掌握しているという、国家的にも経済的にも法的にもいろいろと大問題なのに放置とか。独立区の住人がただの蛮族化しているとか(現代文明を全拒否したわけではないだろうに)。まあ、ツッコミ入れたらキリがないんだけども。

とりあえず、ラストで台無しな映画でした(それまでは面白くよかったのだが)。そういえば観ていなかったな、と思って見てみたら、SF感があってよかったのだけれど、オチが気に食わねー、という個人的に残念なところでした。が、スコアはちょい甘め(だってSF映画だもの!)。さて、鑑賞時の気分すぐれなかったのでめんどーなウザ絡みレビューになったけれど、そういえば観ていなかったな映画をちょいちょい観ていこうかな、とは思えたのでよし。
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