テロメア

あやつり糸の世界のテロメアのネタバレレビュー・内容・結末

あやつり糸の世界(1973年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

非常に好みでした。

ラストに上層現実に出られてハッピーエンド! というように見せかけて、実は自分達がアインシュタインにしたように、いつでも消去可能な存在であることに変わりなく、世界全体が上層世界に管理されているか、上層世界のエヴァに個体として管理されていくかの差でしかなく、その管理されているという事実が『愛』の前に見えにくくなっているに過ぎない、というエンドだったので好みすぎた。

そのそもそも論をいうと、シュティラーが上層シュティラーを乗っ取ったという状態は、上層シュティラーがクソ野郎だというエヴァの証言のみで、その本当のところは分からない。エヴァが自分の好みのシュティラーをデザインし愛させて誘導した結果、乗っ取らせに成功しただけとも見做せる。なんせ、シュティラーがいた世界で起こっていた権力闘争などを考えると、それが上層世界で起こっていないと考える方が難しい。下層世界のシミュレーションを自分達の世界に生かす、というのは上層世界でも同じだろう。なら、何らかの権力闘争の末に、上層シュティラーの乗っ取りがあったとすれば、そうなればエヴァがもっとも権力を握ることになるだろう。都合が悪くなれば、アインシュタインのように消去し、また別に用意したシュティラーに乗っ取らせばいいのだから。

誰かに管理され支配されている。それが「あやつり糸」として描かれているが、その実、ラストシーンは現実のように、その「あやつり糸」が見えなくなっているだけで、もともと居た場所と本質は変わらないというオチが、とても皮肉が効いていていい。半世紀前のレトロSFは、自分に合っているのか観ていて心地が良かった。今回はBlu-rayを買った値段分の満足が得られたのでとても良かった。
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