トケグチアワユキ

明け方の若者たちのトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

明け方の若者たち(2021年製作の映画)
4.7
北村匠海・黒島結菜主演。

アマゾンプライムで限定配信されている彼女(黒島結菜)目線で語られるスピンオフ作品「ある夜、彼女は明け方を想う」を、劇場で併映するイベントで鑑賞。
ポップコーンの北村匠海ファンとおぼしき女性に両側はさまれながらは緊張するwww (だいたい私はポップコーン食べながら観る映画に行ったことがない)
でも逆に集中力も高まり、スクリーンから目を離すことも一切なくじっくり観られました。

基本線、私の大好きな、ブレーキもかけずに坂道をくだるような、若気が至っちゃうラヴストーリー。
松本花奈監督はドラマ「恋のツキ」なんかもそうだけど、わりとがっつり (限界ギリまで) ベッドシーンいくよね。
でも、ここをしっかり見せるって、若気を至らせるにはすごく大きな意味を持つと思う。
僕(北村匠海)のあの涙で胸がギューっと締め付けられるのは、ちゃんと見せてこそなんだ。

明大前で始まる大学卒業年代のボーイミーツガールといえば、くらべるもんでもないんだけど、「花束みたいな恋をした」を思い出す。
登場人物の趣味/人格、道具立てやストーリーなんかは正直あっちが好みだし、私はこっちのような野望でオラつく意識高い系になじみがないんだよね。
なんせ就活もしたことなきゃ、意にそぐわぬ配属をガマンしたこともない、札付きのワガママだからね。
おどり場の蛍光灯交換とか総務の仕事だったなんて、この映画で知った。
この映画だと、気分で休んだあとまわりが手のひら返したようにやさしくなるじゃん。
あんなのありえないもん、私の場合。
どんどん愛想尽かされ、どんどんギスギスしていくっていう。
ナンの話だ、おい。

この映画と「花束みたいな...」の大きな違いはキズの残り方だと思う。
登場人物すべての鳩尾の奥の方に結構ゴロッと大きなカタマリが重石のように残っちゃうという意味ではこっちのがいい話だな。
「花束みたいな...」の思い出はそのうち薄れるけど、こっちはちょっと《墓場まで》級に残る。

上映終了後、近くから聞こえて来た感想は「ズルいよね」
ズルいよ。人間ズルくて当たり前じゃん。
奈落に落ちないよう、ギリで立ち回るっしょ?
人間が倫理と正論で生きるなんて...(以下略)
だからこそ、この映画を観る意味ある。
実際どんなことだって自分がやってしまう可能性はあると思っていた方がいいし、ブレーキをかける/かけないだって自分次第。
自由な身にありながら自由を謳歌する他人をやっかむぐらいなら、一歩踏み出すのもありなんだよ。
生き辛くなる? そうかもね。だから?って考え方の人間の感想です。


登場人物でカルチャー味があるのはスピンオフに出てくる若葉竜也(役柄は伏せておきます)だけ。
そういう方向の表現は出会ってすぐのRadwinpsぐらい。
わりとカルチャー味は薄めだけど、《キリンジのエイリアンズを「もうちょっと聞かせて」》は、今はメガドンキになった渋谷HMV(渋谷系の発信源)でキリンジのインディーデビュー盤を買ってたジジイにはグッと来た。
スピンオフ観たあと歌詞をみると、詩の単語にストーリーとリンクする言葉がチラチラして、さらに名曲マッチング度爆上がり。

聞きたくもないのにライヴハウスの待機列であらすじを聞かされ (前のヤツが大声で話してた)、さらにスピンオフまで観てしまった私は断言します。
原作も読まず予告も観ずに映画館に行ってください。
ここまで読んだ人に言っても意味ないか。
でも、そのほうがいろいろ考えること出てくると思う。
フィクションだけど地続きだから。
そういう薄皮一枚のリアリティ。

ここに自分との地続き感のないかたは、まあそっちで生きてください、みたいな。
私はこっちなんで。

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追記 ごめーん。本編みてない人、リンク先いかないでね。

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スピンオフのレビューはこちら。
https://filmarks.com/movies/100741/reviews/127879737