トケグチアワユキ

偽りのないhappy endのトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

偽りのないhappy end(2020年製作の映画)
4.8
まず最初に言っておきたいのは、私にとって満足感のすごくある、とてもいい映画だったってこと。
ずっしりと重みのある、見応え充分な作品。
ただし、1回観ただけではわからないことだらけだった。
というか、これたぶん何度観てもわからないことはわからないままだな。
たとえば殺人事件なら犯人が...とか逮捕が...とか結果と解決を欲する傾向なら、観るのは向かないかもね。
監督はおそらくそこに興味ないんじゃないかな。
明確な答えなど何ひとつないと言って過言ではない。
それでも、いい作品だったと断言する。
ストーリー、もっと言えば論理に帰結などさほど重要ではないということ。
とにかく時間に身を委ね流転していく。
機会があればもう一度観たい。


なぜこの作品を観ようと思ったかというと、鳴海唯という俳優に興味が出てきたから。
朝ドラの「なつぞら」に出ていたのもほんのり記憶にはあるが、なんと言っても21年10月期にTVKで放送されていた「ムショぼけ」で、北村有起哉の娘役をやってたのが印象的だった。で同じ時期「スナックキズツキ」というドラマでは西田尚美の高校生時代を演じパラパラを踊っていた。
どちらの役もとても生き生きと演じられていて、この人は俳優が楽しくて仕方がないんじゃないかと思えた。
で、他に観られる作品はないかと探した。


あらすじの冒頭に「行方不明の妹を...」みたいな一節があるのが目に入った瞬間、情報を入れずに観たほうがいいかなと、予告編も観ることなく映画館に入った。
鳴海唯はストーリーや映画のトーンからかなりダークな演技をしていたが、それでも演技することを楽しんでいるのが感じられて、しばらくは目が離せない俳優かも。

墓地で、かつてのクラスメイトと遭遇してしまうシーンからエンディングへの、怒涛のような畳みかけは、観ているこちらも締め付けられる息苦しさ。


たぶんすごくインデペンデントな制作の映画で公開規模も小さいと思うけど、観られるチャンスがあれば、ぜひ。
こういうの観てしばらくモヤモヤし続けるのも楽しいと思います。

松尾大輔、鳴海唯、アベラヒデノブのトークショウ付き上映。

追記
音楽がすごくよかった。オーソドックスで的確。