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マンティコア 怪物のRのレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
4.2
試写会にて鑑賞させていただいた。

「マジカルガール」の監督なのでそれなりの覚悟をもって臨んだつもりだが、予想の斜め上をいく領域に踏み込んでいく作品だった。

直接的な露悪描写こそないが、人によっては脊髄反射的に拒否反応を示してもおかしくない内容であるし、その着地も今日的にみて非常に物議を呼びそうなものと感じた。

しかし、私は作り手の野心を大いに評価したい。
昨年話題を呼んだ『正欲』は個人的に全くピンとこない映画だった。
「他人に理解されない欲望を抱いた人間の生きづらさ」というテーマ設定を“水”という誰にも不快感を与えない象徴に置き換えはぐらかしたことがこれ以上ない欺瞞だと感じたからだ。
その点において本作は、社会的に決して許されざる欲望へと葛藤しつつもひたむかう主人公を簡単に断罪することも美化することもなく正面から描ききっている。

特筆すべきは、VRという現代的なツールを駆使したことで、ブニュエル以来、アルモドバルそしてアメナーバルと脈々とつづいてきたスペイン映画人の「欲望のあり方」への探究に新たな地平を拓いたことだと思う。

無闇には他人に薦めづらいが、倫理的な是非のみならず多角的に味わいようのある作品である。
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