WOWOWさんのご招待で完成披露試写会にて鑑賞。
今年ベスト。
予告編が感動売りでかなり不安だったが、まったくの杞憂だった(予告やコピーで鼻白んだ人も是非鑑賞を！)
完膚なきまでにシビアな現実を突きつけてくる作品であり、気持ちよく“泣ける”代物では決してない。
石原さとみはキャリア初期にSPドラマ版「氷点」で、出自に十字架を背負った少女の心を微細に表現しており、すごい女優だと震撼したのを記憶している。
ただし、その後は需要とのミスマッチにより、誰でも替えがきくようなラブコメ作品ばかり。コメディよりも絶対にシリアス向きの役者なのに役不足を残念に思っていた。
そこにきての本作、舞台挨拶で本人も述べていたが、間違いなく彼女の転換点となる作品になるだろう。
吉田恵輔作品は全作鑑賞しているが、この作家もコメディとシリアス二つの系統があり、「さんかく」をコメディ作品の頂点とするならば、本作は人間ドラマ作品の到達点といえるだろう。
勿論、吉田印ともいえる“笑っていいのかわからないタイミングで放り込まれるギャグ”は健在。
今回はそれが露悪に終わることなく、抜群のモブ遣いによって“他者への想像力の欠如”という現代社会の縮図としてテーマとも上手く合致しているのが見事。
近年、巨匠の地位を手にして人情ものの“ええ話”しか撮れなくなってきた是枝監督よりも、まだまだ毒を抜く気など更々ない吉田作品のほうがよっぽど海外に売り出す価値があるように思えて仕方ない。
