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関心領域のRのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
ニューズウィークさんのご招待で試写会にて鑑賞。

これは劇場で観てこその作品。「オッペンハイマー」を抑えオスカー音響賞を獲得したのも頷ける。

開巻早々画面で展開されるのは、清水宏の映画かと見紛うほど陽気な片田舎の行楽や水辺の風景。その一方で、耳には地獄からの轟音が終始こだましつづける。

残虐のスペクタクル化の拒絶という姿勢は、クロード・ランズマンのホロコート表象における倫理感を引き継いでおり、「サウルの息子」と表裏一体の作品とも言える(ガザ侵攻の是非を巡って監督同士は対立しているようだが)。

真に理解するには多くのサブテキストや背景の理解が必要なようで、予備知識なしでの鑑賞では3分の1も理解できていない気もする。

上映後にはZOOMでジョナサン・グレイザー監督の登壇があり、「私たちも観てみぬふりから一歩でも前に進もう」と繰り返し語るその真摯な人柄からは、尖った作風とは裏腹に非常にマジメな人という印象を受けた。

余談だが、抜けるような青空のもと庭の花々と柵をなめるように撮る映像は、実験映画作家ブルース・ベイリーによるわずか3分の短編「All my life」(1966/YouTubeで鑑賞可能)をつい連想した。
読後感はまったく異なるものの、カメラの目と音響の融合のみで何かを物語ろうとするこの独特な作品は、MV出身のジョナサン・グレイザーならきっと目にしたことがあるのではないか。
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