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太陽はひとりぼっちのshabadabaのレビュー・感想・評価

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)
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モニカ・ヴィッティは正面から撮ると表情を欠いていて、ほとんど感情推移を辿ることができないが、一方背後から撮るとボリューミーな髪が後ろ姿とは思えないほど描線の過剰を齎らし不気味な印象を与える。楽しそうに笑っていても、その声はどこか渇いていて空虚さがこだまする。このモニカ・ヴィッティの怪物的な存在感が映画全体を支えているといっても過言ではないだろう。

『情事』ではまだ前半でサスペンスがあったが、本作では本当に「何も起こらない」。株式市場で黙祷する場面、アラン・ドロンが「1分間が10億リラに相当する」とヴィッティに告げるが、この発語は「何も起こらない」映画に対するメタ的な台詞のようにも思える。

ラスト7分、ストーリーの流れから考えれば2人ともが待ち合わせ場所に現れないという事態、まさしく「愛の不毛」を表現しているように見えるが、空間が断片化され反復によって無時間性が生起すると、それはもはや時空間軸から遊離していき、「ここではないどこか」あるいは「現在ではないいつか」というSF的なイメージを提示しはじめる。ネオレアリズモに端を発する映画の時間表現の極北とも言えるのではないだろうか。
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