shabadaba

MONOS 猿と呼ばれし者たちのshabadabaのレビュー・感想・評価

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)
-
猿は視力が人間と同じくらいなのに対して、聴力は人間の7〜8倍あると言われているが、「Monos(猿)」と呼ばれる少年兵たちは映画冒頭、目隠しをしながら聴力だけを頼りにサッカーをしている。だが、主人公のランボーだけは彼らのなかで唯一「見る」ことに固執している。暗視スコープをつけ、ペンダントを首からさげ、自分を匿ってくれた家族の家に飾られている写真に魅入る。善/悪、男/女、大人/子供といった二分法が機能しない欲望が未分化の社会のなかで、唯一、見ることだけが抵抗のロジックになる。映画の中で悲劇に見舞われる者たちは、多くの場合、見ていないが故に悲劇に襲われることになる。撃ち殺されるメッセンジャーも、博士に逃げられるスマーフも、博士に殺されるスウェーデンも。見るという手段を捨てなかったランボーだけは、地獄のような環境から逃げることができたわけだが、ラストカットで映されるランボーの目には両義的な感情が入り乱れている。見すぎたが故に彼は地獄を感知する。ヘリの下に広がる風景が果たして、本当にパラダイスと言うことができるのか、その答えを観客に委ねて映画は幕を閉じる。
正直、期待していたほど面白くはなかったけど、映画のルックの強度はハリウッド映画と対等に立てるレベルに既に立っている感じがした。引っこ抜かれてIMAXで映画を撮るのは、時間の問題という感じがする。キュアロン、イニャリトゥの正統的後継者になるだろう。
shabadaba

shabadaba