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Frost(原題)のshabadabaのレビュー・感想・評価

Frost(原題)(2017年製作の映画)
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人間同士の関係(主人公と彼女)、国同士の関係(リトアニアとウクライナ)、画面同士の関係(映画画面と映画内のスマホ画面)の関係が絡まり合いながら物語が展開していく。インテリどもの会話劇、それに伴う主人公と彼女の諍いと解決は、地理的条件の相同性だけを根拠にウクライナのことを理解できると勘違いしたリトアニア人の滑稽さと皮肉な対照を為している。ウクライナにとっては、やるかやられるかしかないこの戦争を、主人公は彼女との関係のようにどうにかできるものと、最期の瞬間まで頓珍漢な理想を抱き続ける。

戦場が舞台になった途端、ロシア語を喋れない彼女がドラマから疎外されることで、戦争が徹底的に男の価値観によって推進させられていることを暴く構造や、主人公がスマホで撮った画面が映画の画面そのものになることで、主人公の無理解を観客に反転させる戦略など、なかなか切れ味は鋭いが、バルタスらしさはあまり感じられない。車の移動と共に過ぎ去っていく景色が加速とともに進行方向を見失っていく様子を捉えたショットだけがある種の異様さを身に纏っている。
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