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グレイテスツ・ヒッツのshabadabaのレビュー・感想・評価

グレイテスツ・ヒッツ(2012年製作の映画)
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映画前半は主人公がまだ子供の頃に家を去った父親が突然帰ってきて、困惑する家族の様子が描かれているが、中盤でカメラ手前から監督の声がガビーノ・ロドリゲスに向けられると共に、ナラティブが一気に瓦解する。父親を演じる役者が別の役者に入れ替わり、ドキュメンタリーの様相を呈し始めるので、一瞬、この「新しい父親」が本当の父親で、前半は後半のドキュメンタリーを基にしたフィクション、という構造になってるのかと思うとそうでもない。「新しい父親」は実際は監督自身の伯父であり、後半ではどうやら前半のフィクションを基に、さらにドキュメンタリーのようなフィクションが撮影されているようだ。それどころか、後半部分も時間経過とともに、ドキュメンタリー性が薄れ、前半と地続きのフィクションの様相を呈してくる。

ドキュメンタリーとフィクションの境を混濁させたり、映画の生成過程を映画そのものに組み込むようなやり方は、最近結構為されているが、本作品はその中でも明らかにラディカル。諏訪敦彦、ブニュエル、ペドロ・コスタ、濱口竜介らの取り組みが100分強の映画にぶち込まれ、作品としてまともに成立してしまっているのはほとんど奇跡としか言いようがないのでは…。
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