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最後の決闘裁判のshabadabaのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
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『羅生門』と一応は同じ構造になっているが、3つの真実があるのではなく、各々の欲望に応じて再編された一つの真実の三つのパターンが並列させられている。「マルグリットの真実」の妥当性が高いと判断されるのは、ご丁寧に「真実」という注釈がついているからではなく、マルグリットがそのように語るメリットが前者二つに比べると明らかに無いからである。スラヴォイ・ジジェクが『羅生門』に関して指摘したことを、作り手側が意識しながらポストMeTooの文脈の作品として作り上げたといった感じだろうか。最後にマルグリットの証言を持ってくることによって、この映画は、映画と観客の間で生み出されるイデオロギー性を告発している。さらに、最後の決闘はマルグリットが2人の決闘を上から見守ることによって、リドリー・スコットが今まで散々やってきた「決闘もの」を脱構築している。ジェームズ・マンゴールドが『フォードvsフェラーリ』で西部劇に対して行ったこと、マーティン・スコセッシが『アイリッシュマン』でギャング映画に対して行ったことをリドリー・スコットは華麗にやってのける。誇りとプライド、男らしさを賭けた決闘は女の視線のもとで醜く下らないグロテスクな茶番劇へと変貌を遂げる。
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