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赤い砂漠のshabadabaのレビュー・感想・評価

赤い砂漠(1964年製作の映画)
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1964年という時代に工場、汚水、有害ガスをカメラに収めてるにも関わらず、その風景が時代の社会問題の反映になるわけでも、ましてや人物たちの心象風景となるわけでもない。世界は「ただそこに」現前するだけで、人物たちは世界から切り離されてしまっているのが『情事』以降のアントニオーニ作品の定石だ。

しかし、いわゆる「愛の不毛」三部作と異なっているのは、リチャード・ハリス演じるコッラドの「信じることを行う」という台詞に単なるニヒリズムを超えでた実存主義的な問題意識が垣間見える点であり、このことは『欲望』の主人公がラストで行うパントマイムへと直結するだろう。

アントニオーニの作品の中でも音の使い方が圧倒的に秀逸な作品だと言える。インダストリアルノイズがサントラなのか、それとも工場の音なのか、はたまた幻聴なのか識別不可能なものとなる地点にアントニオーニの映画作家としての先進性が現れている。
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