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エロス+虐殺のshabadabaのレビュー・感想・評価

エロス+虐殺(1970年製作の映画)
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この作品を吉田喜重の最高傑作とするのはあまりに無理があるでしょう。政治的なラディカルさが作品構造の必然性へと帰結する大島渚と違って、吉田喜重のいわゆる「日本近代批判三部作」は何を語ろうとしてるのかが見えてこない。かといって、駄作かと問われるとそういうわけでもない。

人物たちの空虚な発語や、ほとんど脈絡のない行動、必然性を感じることのできないプロット運び、やたら五月蝿いサントラで、作品としての単一性をほとんど失いかける限界まで近づくかと思ったら、急にハッとするようなショットによって映画としての強度が異常に高まる、といったような極度の緊張と弛緩の絶え間ない反復は恐らく唯一無二。

融解していく現代と大正の境界、形而上学的なレベルで繰り返される神近市子による大杉栄の刺傷事件、キリスト教的モチーフ、政治とセックス…コンテクストが統御なか膨大に膨れ上がっていく様は圧巻ではあるが、成功してるのか失敗しているのかよくわからない。
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