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燃ゆる女の肖像のshabadabaのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
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正直、全くと言っていいほど面白くなかった。視線のアクションに関しては、ロベール・ブレッソンやホセ・ルイス・ゲリンの方が数段上手だし、自然光の美しいショットもテレンス・マリック以降使われすぎて食傷気味。ジャック・リヴェットの『美しき諍い女』を意識してるだろうけど、そのレベルには全然至ってないと感じる。オルフェのくだりに関しても、明らかに説明しすぎで下品。

中絶の場面、ソフィーの傍らに赤ん坊がいる様子は妙な生々しさがあり、素晴らしいが、他の部分が全くと言っていいほどリアリズムに徹していないため、このシーンも台無しになってる。ラストでエロイーズの表情の微細な動きをカメラが捉えられたらまだ救いがあったが、これも大袈裟な演技で台無し。

ジュディス・バトラーやローラ・マルヴィの先駆的な研究以降、映画において女性のまなざしが重要なのは間違いないが、研究を前提に作品を構築しているような部分があって、作品そのものが貧しくなってる感が否めない(ジェイ・ローチの『スキャンダル』もそうだった)。さりげなく、なおかつ戦略的に視線のドラマを演出してみせたグレタ・ガーヴィグの手腕が一層際立つ。
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