世界(西洋文化圏)一過小評価されてる映画
友人のトルコ人がこの映画を勧めてくれた。私は「あれ?どうせイケメン俳優を起用してイスラムが悪者に描かれてるプロパガンダ映画なんじゃないの?」と不思議に思ったが、鑑賞し終えて納得。そして低評価勢にも納得。
完結にいうと主人公は十字軍側だが、イスラム目線で物語は描かれている。西洋圏やグラデュエーター2を求める観客には不評だったわけだ。
根本的にイスラム(とイスラムの英雄サラディン)の知識がないと楽しめないかも。なんとなく私たちは十字軍が善で、イスラムが悪と思い込んではいないか?ナイトっぽい十字軍と、軽装の盗賊っぽく見えるイスラムみたいな。
ウェスタン資本でイスラムを撮るリドリーの気概、イスラムリーダーサラディン、エルサレム王ボードワンの怪演は良いのだが、オーランド、リーアム、エヴァグリーン、この変が全然良くない。ジャケットではリーアムがドヤってくるが序盤で退場するし、必要とは思えない。エヴァグリーンもサディスティックな持ち味もなく中途半端。なので落ちぶれるところも落差がない。
オーランドは俳優として期待はしてないのであれだが、演じるバリアンの行動原理がいまいちよくわからない。急に強かったり、指揮したり、余所者なのにエルサレムと心中する気概が謎。
有名なヒッティーンの戦いは、チェンソーマンなみに省略してくる始末w映画だとどうなるか?みたいに描かれる最後の籠城戦などはもともと結末が分かってるくらい戦力差があるので緊迫感はない。
ただイスラムを知りたい人。にはおすすめ。
実は会話の随所にイスラムの挨拶のシーンが結構登場するのだが「アッサラーム・アレイクム(あなたが平穏でありますように)」「ワーアレイクム・アッサラーム(あなたにも平穏がありますように)」、ストーリー的には端折っても良いはずなのにあると言うことはそれが監督の意図。イスラム側が平和主義的で多様性を認めていて十字軍は排他的なアホ、そのように描かれている。十字軍の中でもイスラムと和解派は知性的で、打倒イスラム派はアホに描かれている。ラストもどちらが勝者敗者ではなくサラディン側から優しく和解案を出される始末。受けないはずだ。
映画「沈黙」のようなテーマもある気がする。本当に神がいるのならエルサレムに固執して死ぬことをよしとするのか?外面的な信仰が本当の信仰なのか?信仰が目的で目が曇ってはいないか?
サラディンの最後のセリフ「エルサレムには何もない、だが全てがある」これをお茶目な笑顔とポーズで言うのだが、仏教的な意味あいにも感じれる。
サラディン、イスラム目線で観ることが出来れば評価は大分変わるだろう。