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オッペンハイマーのASHITAKAAkinoのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


2024年映画28本目

分裂と融合とその延長線上にあるモノクロパートで構成された映画。
年代とかパートの説明もないし、下手したらカットごとに切り替わる。時系列がメチャクチャで超不親切で超好き。監督の時間や文学に対する偏愛ぶりは相変わらず。

現在、あるいは味気ない苦々しい未来として白黒にされると、傑作『Better Call Saul』を思い出してしまう。『Dune Part2』でも思ったけど、IMAXだから遠景や活劇を撮ってなんぼというわけでもなく、正面の表情や顔の接写が目立つ。だから、とても映画らしい映画。最新テクノロジーを携えてここに来て回帰、というのが良い。人を撮る。台詞を回す。繋ぐ。それだけで成立する。

デコパージュと劇伴で増幅される恐怖や不安や不穏さが作品のムード。ビリビリという轟音だけでなく、会話の中の棘やその応酬、原爆の実験を終えてもなお続く現実はハード。
過去にはなかった現在の法で判断しようとする。裁判ではない。表舞台に立たせない。記録もない。現代に通ずる、というより過去から色濃く残る問題もさらりと映す。裁く立場にない大勢の人々による私刑。出来レース。

監督、女性の撮り方がおざなりな印象だったけど、本作は原作に良い意味で引っ張られたのか、とても良かったです。うまくは言えないけど、エミリー・ブラントはいつもの布陣に入っていてもおかしくないが、フローレンス・ピューはどこか毛色が違うし、いい役者だなと。途中退場するし、総出演時間は長くもないのに、ぶっちぎりの存在感。好き。

三分割されたあの原作を逆によくこのサイズに収めたなとも。日本への不適切かつ配慮に欠ける会話は当時の再現のようで(それでいい)生々しい。先住民にその土地を返したらどうなったのか。とかの贖罪的なパートは少ないようにも感じられたが、元々罰であるあの密室でのやり取りに割かれているのでバランスを優先したのかなと。

観終わってからもずっとあれこれ考えたくなるような作品。予備知識必須。普通に学校の教材でいいのでは(クレームかける親が目に浮かぶが)、とも。
日本人が観るとやっぱり他の国とは違う印象や感想や感情みたいなものが垣間見えて興味深い。
あと公開して良かったなと。

Thank You Bitters End, F*** 電通。
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