はぐれさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

はぐれ

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あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)

3.9

キング牧師のある一時期に焦点をあてた『グローリー 明日への行進』と同じくマルコムXの生涯を描かずにある1日の行動だけに絞った作品。そのため結末が暗殺という暗いものにはならずに大変に力強いパワーを持った>>続きを読む

ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.4

母子の物語。ナタリー・ポートマンやスーザン・サランドンの母親役も勿論素晴らしかったのだが破滅型のスターに陥りそうなドノヴァンにあえて厳しい言葉を投げかけたマネージャー役のキャッシー・ベイツが白眉だった>>続きを読む

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

4.0

退廃的で耽美的な究極の映像美。全てのカットの構図が恐ろしいほどに美しく完璧。ストーリーなんか気にせずにそれだけを追う方が正しい鑑賞法なのかも。

まるでRPGのモブキャラの村人のように生気も表情もなく
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ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

3.5

ファーストシーンのドールハウスからの導入部が秀逸。カメラワークが神の視点であり観察者の眼差し。

死してなお存在感を示す祖母の存在が終始不気味。ミッドサマーのようにどこか浮世離れした遠い世界の話より身
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ザ・ライダー(2017年製作の映画)

4.3

頭に重度の傷を負い、天職である調教師という生きがいを手放さなくてはいけなくなった男の話。

草原のマジックアワー。丘の上でポツンと佇んでいるサラブレットの馬影を歩きながら追う主人公のカットがまぁ見事。
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マ・レイニーのブラックボトム(2020年製作の映画)

3.5

オバマ大統領も今年の10本に選ばれていたので今年の内にといそいそと鑑賞。

主人公が「白人にブルースは分からない。成り立ちを知らないからね」とポツリと呟く。その知られざる苦悩や痛みの壮絶さ。

ラスト
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ミッドナイト・スカイ(2020年製作の映画)

3.5

どうしてもキューブリックやノーランそしてキュアロンと比べると見劣り感はあるけどガチャガチャしていない静謐なSF好きとしてはのめり込んで楽しめた。

ただ人間の内面を深く掘り下げる使命を予め課されている
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エルミタージュ幻想(2002年製作の映画)

4.4

ずっと見たかった本作。まさか配信レンタルされているなんて知らなかった。

エルミタージュ美術館で何千人ものエキストラを入れてのワンシーンワンカット撮影を行うというマジキチな企画。ソクーロフってやっぱ狂
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娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)

4.4

CGであってくれ!フィクションであってくれ!と願いたくなるほどの戦地の惨状。街全体がアサド政権とロシア軍に包囲されて生活の場が戦場へと変えられてしまう理不尽さ。病院を狙って集中的に空爆をする通常の人間>>続きを読む

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)

4.2

誰かひとりの白人を悪者に仕立ててキャラクターをデフォルメして対決させるような従来の安易な手法を取らずにただただ真実のみを積み上げていく堅調な演出。しかし、その皮下にはマグマのように熱い煮えたぎった怒り>>続きを読む

CURE キュア(1997年製作の映画)

3.6

窓が1つもない薄暗い部屋なのに電球は切れていてライターの照らす微かな灯りだけを頼りに部屋を捜索しなくちゃいけない。そんなイライラ感が満載の作品(笑)

刑事であろうが医師であろうが教師であろうがどんな
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ザ・プロム(2020年製作の映画)

3.9

『プリシラ』的な開き直った底抜けの明るさに救われる作品。意識高い系の善意の押し売りも地方の保守系の排他性も両方とも徹底的に笑いにして自虐している感じが好き。片方に肩入れしている描き方だったらこんなに楽>>続きを読む

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

3.5

主人公が清々しいまでのクズ人間。もうクズ中のクズ。感情移入の余地なんて1ミリもない。こいつがどうなろうとどうでもいいから逆にヤキモキせずに晴れやかに物語の筋を追える。

シーンやセリフの余白がなく極め
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ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)

4.2

前作のブラック・クランズマンの時も思ったけどスパイク・リーの映画ってアメリカのスタンダップコメディのように物語の隙間にふんだんに時事問題を絡めてくるよね(笑)まさにスパイク・リー節全開!泥臭くて説教臭>>続きを読む

13th 憲法修正第13条(2016年製作の映画)

4.2

「白人の場合祖先の選択があって今に至る」「だが黒人の場合祖先に選択権はなかった」。この言葉が全てかも知れない。

必死に黒人の窮状を訴える人権家の方々の顔に対して平気で差別的言動を繰り返す政治家や群衆
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Mank/マンク(2020年製作の映画)

3.7

正直、市民ケーンのストーリーやその後のオーソン・ウェルズの不遇などある程度予備知識がないと内容が頭に入って来ないかも。

新聞王と映画会社が結託して知事選のイメージ操作をしている様はまるで現代のトラン
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

2.8

いかにもアーロン・ソーキンって感じの構成と芝居と脚本。脚本家の監督作ってオーラが全編に溢れている。

悪役の判事と被告の主人公達を含めてみんなひと癖もふた癖もあってそりゃこじれるよなっていうイライラ展
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007/カジノ・ロワイヤル(1967年製作の映画)

2.7

バート・バカラックのあの名曲が聴ける映画。

自身の監督作品ではないのにウディ・アレンが出演しているのがとにかく新鮮。共演シーンこそないがオーソン・ウェルズ、ジョン・ヒューストン、ピーター・セラーズ、
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BROTHER(2000年製作の映画)

3.7

『ジュース』のオマー・エプスを見て無性に見たくなり久しぶりに鑑賞。

今見返すとその後の北野映画のフィルモグラフィーが頭にあるせいか常連の大杉漣、寺島進、久石譲との関係性がとにかくグッとくる。
てかも
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(1997年製作の映画)

4.0

ニートが首痛い話(笑)。それだけなのに2時間も観させてしまうからスゴイ!

リー・カンションの肉体に映画が宿っている。どこにもぶつけることが出来ない青年の鬱積したマグマが彼の胸筋に上腕筋に封入されてい
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読書する女(1988年製作の映画)

2.5

マルクス主義者のイカレタおばあちゃんだったり主人公に恋心を抱く寡黙な車椅子少年だったり可愛らしい顧客の皆さまとのエピソードはとっても微笑ましかったんだけど、後半になるともうただの脱法デリヘルマッサージ>>続きを読む

ジュース(1992年製作の映画)

3.1

キャグニーの『白熱』のごとく悪の道へ邁進して自滅していく青春物語。
黒人が主人公で舞台がハーレムの作品なのにHIPHOPがないことの違和感。DJバトルもまさかのターンテーブルを擦るだけの超牧歌的なスポ
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L・B・ジョーンズの解放(1969年製作の映画)

3.3

巨匠ワイラーの遺作。
半世紀も前に作られた黒人差別を扱った作品。構図は悪徳白人警官vs妻を寝取られた黒人葬儀屋。

ワイラーの演出はどこか達観している。虐げられる黒人達に寄り添うというよりも俯瞰からそ
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(1965年製作の映画)

4.1

巨匠ルメットの埋もれた名作。

囚人兵がシゴキに耐えかねて絶命するシーンは狂気そのもの。上からの理不尽な要求にこたえ朝から晩まで働き尽くめで過労死する現代の労働者を見ているかのよう。
また囚人達が決起
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.6

もう圧倒的。視線の使い方がとにかく絶品で何も語らなくても惹かれ合う二人の心情を目の動きだけでつぶさに物語ってくれる。
登場人物も場面も限られていてまるでライヒやグラスの音楽を聴いているかのように厳かで
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丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

4.3

カッティングやシーンとシーンの間が絶妙。左膳「誰が送っていくかい!やだい!やだい!!」→客を家まで送り届ける左膳。みたいな感じでその間髪入れない間が半世紀以上経った今見てもプっと吹き出してしまうほどお>>続きを読む

チンパンジー属(2020年製作の映画)

2.9

巨匠ラヴ・ディアスの新作。搾取される者たちの怒りと悲しみと絶望の物語。フィリピンの片田舎の土着性、カトリックの死生観、そして監督特有のモノクローム映像で今作も異様な妖気を放ちまくってた。

ただひとつ
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林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

3.4

人生のリセットボタンを押してしまった男。売れなかったダニエル・デイ・ルイスみたいな風貌の男。過去から逃れようと全てを忘れようとする男。

その理由について何も語らないし説明くさい過去のインサート映像も
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はじまりのうた(2013年製作の映画)

4.6

TBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』で主題歌である『Lost Stars』の歌詞解説を聴いてハマりにハマった作品。ストーリーも登場人物も楽曲も全てが愛おしくて抱きしめたくなる🤦

また成孔さんの和訳が
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人情紙風船(1937年製作の映画)

4.9

作品全体を覆う陰鬱な闇のオーラ。首吊り自殺に始まり心中で終わる。救いなんて1ミリもない。大戦へと突き進む当時の日本の空気を瞬間密封したかのような肌感。それなのに長屋の住人は生き生きと躍動している。まる>>続きを読む

悪は存在せず(2020年製作の映画)

2.7

そりゃ政府に睨まれますわっていう攻め込んだテーマを扱っているのに演出がまさかの説教くさいド演歌調というアンバランス(笑)自分にはちょっとウェットすぎました。

余談。エンドロールに流れる曲がその前のエ
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国境の夜想曲(2020年製作の映画)

2.9

ISがもたらした後遺症に悩まされて暮らす人々の生活のスケッチ。

油田の炎で赤く燃える夜空を背にして時折聞こえてくる銃声に怯えることなく淡々と夜釣りをする現地民の姿。この画だけでもう映画だよね。

トラブル・ウィズ・ビーイング・ボーン(2020年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

東京国際映画祭にて鑑賞。

低予算なんだけど静謐で上質のSF映画。この手のやつに目がないんでどストライク。
表情や人の姿すら見えない暗闇のシーンがやたらに多い。演技なんて見せてやるものかとする監督の気
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王になろうとした男(1975年製作の映画)

3.3

ショーン・コネリーへの追悼の意味も込めて積ん読状態だった本作を鑑賞。
未開の地で王と崇められる役をこなせられるカリスマ性やオーラを持ち合わせていた稀代のスターだったのだなぁと改めて。

また広大なロケ
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ノマドランド(2020年製作の映画)

4.7

東京国際映画祭で鑑賞。

現代版の『怒りの葡萄』。しかしこちらはあまりにも孤独な旅路。街を失くし愛する人を失いひとり放浪の旅を続ける主人公に優しく寄り添うクロエ・ジャオの繊細な演出があまりにも荘厳で美
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